とある未成線の話【青春鉄道】

中山道さん２９ ページ32

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　失礼なことをした覚えは、ありずぎて何も言えないが、あのあと
は仲間に回収されるものだと思っていたのだが、そうではなかった
らしい。中山道に見捨てられたとは考えないが、どうにか状況を理
解したい。熱が上がりそうだと遠い目をした。
　宇品線が自身の顔を突っついてくるが、反応を示す気力もない。

「と、かいど、ほんせん……」

　あの当時、筆頭本線として君臨していた男が、自身の目の前にい
る。あの時は福知山線が、自身と共にいたから、何とも思わなかっ
た。だが、今はどうも、心もとないのしかいないためか、遠い目を
するしかない。

　今の篠山鉄道には、熱があるから頭が回っていない、という考え
が抜けている。


「まぁ、今は熱もあるし、熱に浮かされてる奴に吐かせたなんて言
うと中山道に嫌われる。ゆっくり休め。俺達がいると休めねぇと思
っていわて銀河鉄道連れてきたから」

　じゃぁ、それだけ。

　そう言って彼は東北本線と、先ほどのメガネの青年を連れて出て
いった。

　――“宇都宮線”って東北本線のこと!?

　出ていったのを見送ってから思い出したが、もう、起き上がる気
力もない。兎に角、未だに距離が近い宇品を遠のける。それから、
身をベッドに横たえた。

「お前さん、東北本線達に連れられて宿舎に来たんじゃ」

　びっくりしたぞ。

　宇品の言葉に、篠山鉄道は「そっか」と声を漏らすだけで応える。
　とにかく寝せてくれ、と頼む篠山鉄道に宇品は頷いて「おやすみ」
と声を返した。


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