中山道さん20 ページ23
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「矢板!」
「サンキュ! 幌内!」
投げ渡された木刀を取り、走るために並んでいた京浜東北達の前
に出る。
「守るから、大人しく集まって! 俺等が、アンタ等を守る」
木刀一本だけ持って襲い来る集団の防御をする。
防戦一方なのは、自分達、廃線は人間を傷つけてはいけない。そ
ういう決まりがあるからだ。現役路線には触れない。人間を傷つけ
ない。
それを規則を遵守しつつ、現役路線を守る。だから、基本的には
防御しかできない。彼等が疲れてきたところを一発で落とすしか方
法はない。どう考えても、状況的に不利だ。
乾いた笑いが漏れそうになる。
だが、中山道が何も言わないのだ。だから、矢板達も何も言わな
い。一番、虐げられている、一番か弱い彼女が何も言わないのだか
ら。そして、相手をしていて気が付いたこと。
この中にいるのは恐らく――
「矢板!」
「だいじょーぶ! 伊勢崎達は俺等に任せればいーの!」
叫ぶように言って、矢板は笑う。
そう、自分達は、これでよいのだ。世間様には忘れられ、存在意
義を持たない自分達は、何もできない自分達は。――現役達が一番
いい環境で走れるように手伝うのが似合っている。いつか、あの男
に言われた言葉を思い出す。
――お前達はここで働けて幸せだろ?
ニヤニヤと嫌な笑いをして、自分達を見下したあの男の顔が思い
出される。嫌だと思いつつも、そうだと思わざるを得ないのだ。
自分達は、廃線なのだから。
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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時