中山道さん15 ページ18
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中にいる廃線達に気付かれないために、それなりの距離を保って
いるせいで中の会話は聞こえてこない。だが、彼等がIGRの持って
行った保冷剤を受け取っているのは分かった。
――あぁ、そういうことか
IGRはやはり、彼等が外にいることを知っていた。だから、保冷
剤を持っていったのだ。
「一つ腑に落ちねぇんだけど」
不機嫌を隠そうともせずに高崎は呟いた。
その視線は空を睨み、その先を睨んでいるように見えて、しかし、
彼は何もその視界にうつしてなどいない。憎しみに近い負の感情を、
持て余している。
「中山道さんって、故意に俺等を避ける人じゃねぇよな」
低く唸るような彼の言葉に、東海道と宇都宮は頷いた。
中山道は優しい人格を持っていた。辛い怖いと泣き叫んだ幼い自
分達を、彼女はいつも穏やかに微笑んで慰めていた。プレッシャー
に押しつぶされそうになった東海道を、慰めたりしたのだ。
そんな彼女は、故意に人を避けたりしない。
自分達に弱いあの中山道が、自分達に怯えるとも思えない。どう
したものかと首をひねるしかなかった。彼女の様子が変わってしま
ったのは、なぜなのか。離れていた時間が長すぎて心当たりがない。
彼女と過ごした時のことは、鮮明に思い出せるが、原因など思い当
たらないのだ。
「IGRに問い詰めるか」
呟いたのは東海道。高崎と宇都宮は驚いたように彼を見たが、反
論は出ない。
東海道はそれを知っていて発言した。中山道を自分と同等に慕っ
ているのを知っている。だから、反対はされないと知っていた。ず
っと会えず、静かに大人しく中山道の様子を聞くだけにとどめてい
たというのに、その話すら偽りというではないか。
東海道は静かに幕の中のにぎやかさを眺めていた。
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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時