3 ページ5
・
今年の夏カムバをして、そしたらその曲がなんとものすっごく売れた。
特に一緒に曲を作っているユナオンニとはたくさん喜びあって、お互いを褒めあった。よく頑張ったね、て。
デビューして7年目を迎えようとしていた。私たちメンバーは駆け抜けてきたから正直一瞬だったけれど、もう中堅なんて呼ばれる年だ。
ここがARCANAのピークだ、なんて事務所のスタッフさんたちが裏で話しているのを何度聞いたかわからない。
単純に悔しくてその人たちを見返したくて、オンニと気合を入れて作った曲だった。
だからすごく嬉しかったし、まだまだARCANAの時代は終わらないぞ、って証明できたんだと思うとホッとしたんだ。
と、喜んでいたのも束の間、ヒットしたらヒットした分だけ忙しくなるのがこの業界の常。
それはありがたいことに各地を飛び回り、各国をも飛び回った。
もともとメンバーの中でもインドア派で体力に自信のない私にはきついスケジュールだった。
それでも心配も迷惑も掛けられないから、何とか踏ん張って、やっと活動も終盤に差し掛かった頃だ。
ついに立っていられないくらい、体調が悪化した。
あと片手で数えられるくらいの舞台しかないのに耐えられないなんて、ほんとにだめだなぁ。
もっと体力をつけないといけない。
と、今更悔やんでも仕方がない。
体力なんて一朝一夕で付くものでもないし。
せめてメンバーに心配をかけないように、と、静かに控え室を出て、少し休もうと人気の無い方へふらふらテレビ局を歩き回った。
そして今はもう使われていなさそうな物が置かれている部屋を見つけた。
しかも鍵は開いたままで、重要なものは何も置かれていなさそうだった。
此処なら誰も来ないだろう。
失礼します、と心の中で挨拶をして部屋の電気をつける。散乱する物を避けて座り込んだ。
背を預けた壁が冷たくて、ひんやりと火照った体を落ち着かせてくれる。
正直手足の感覚があまりない。
熱はそんなに高くないと思うけれど、貧血を起こしているんだろう。
昔から体が強い方じゃないから仕方ないことかもしれないけれど、それでもプロとしてこの様はだめだ。
あまりにも不甲斐なくて涙が出た。
身体的にも精神的にも限界だったんだと思う。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1083人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：をーみん | 作成日時：2021年5月4日 23時
