34 ページ36
・
2週間程滞在して、また次の国や地域へ行く。
そんな生活を半年くらい送っていた頃、マネオンニから電話をもらった。
それまでは週に一度生きてますという報告のやり取りしかしていなかったから、珍しいなと慌てて電話に出た。
「今度ドラマのオーディションがあるんだけど、出てみない?」
『ドラマ??』
「そこの監督さんがね、あなたにもぜひ参加して欲しいって声をかけてくださったの。」
マネオンニの声は心なしか嬉しそうだ。
「また連絡するから、その時までに決めておいて。
じゃあ、体に気をつけてね。」
プツっと途切れた音声に、スマホをぼーっと見つめた。
ドラマは過去に何度か出演したことがあった。
一度主演に選ばれたこともあるし、楽しくて本当に貴重な経験だったと思う。
私はやっぱり何かを表現することが好きなんだなぁと思えたし、
メンバーたちは「演技をしている方が楽しそう。」と妬いていた。
実際そんなことはないけれど、その時は久しぶりではしゃぎすぎたのかもしれない。
・
ホテルでシャワーを浴びて、ケアをしながらお昼に聞いた話のことを考えていた。
…私で良いんだろうか。
監督さんがわざわざ声をかけてくださったなんて。
そんな期待に応えられる自信がない。
〈さぁ、次は皆さんお待ちかねのBTS の登場です!!〉
他の国にいても韓国の番組を見るのが習慣になっていた。
先ほどまでバラエティ番組を流していたパソコンは、いつのまにか音楽番組に切り替わっていたらしい。
活動休止をしてからはなんとなく避けていたものだったけれど、何故か変える気になれず画面を見つめた。
キラキラと一層輝く画面に映し出された7人の男性。
最近カムバをしたのかな、前に見た時と雰囲気が違う。
「今回も頑張って準備してきたので、たくさん愛してくださいね!」
可愛らしい笑顔を浮かべている彼は、あの日助けてくれたジョングクさんだった。
相変わらず綺麗な声だ。
それを聞くとひどく安心するのは、何故だろう。
[ 俺が今まで真っ直ぐにアイドルを続けられているのは、もちろんメンバーやスタッフさん、ファンの皆さんのおかげだけど、
あの日SUIさんに出会えたおかげでもあるんです。
ありがとうございました。]
また、あの声が頭の中を駆け巡った。
・
1083人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:をーみん | 作成日時:2021年5月4日 23時