風紀委員長のわんこですが (ページ2)

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1匹目　犬になりました① ページ2

「桜井さん、これ応接室に持って行ってくれる？」

授業終わりになんとなく先生と目を合わせたばっかりにプリントをどっさり渡されてしまった。

入学したてで友達もとくにいなかった私は断る理由もなかったので先生の頼みを引き受ける。

よく頼み事されるんだよね、私。

応接室って…ここだよね？

重々しいドアの前に立つ。

なんだかここだけ違う世界のような、不思議な空気が流れている。

先生も「くれぐれも失礼のないようにね！」となんだか怯えた様子で言っていたし、もしかしたらこの部屋でとんでもない肉食動物でも飼われてたりして……

なんてね。

とりあえず、これ部屋に運べばいいんだ

よいしょっと

プリントを片手に寄せ、もう片方の手でドアノブを握った。

扉を開くとそこは……

『……なんだ、何もないじゃん』

ごく普通の部屋だった。

強いて言えばちょっと居心地がよさそうかも。まあ応接室なら当然か。

さっさと用事を済ませようと先を急ぐ。

ソファーを通り過ぎたあたりで視界に何かが映った。

『ん？ ……うわっ！

人……？』

すやすやと寝息をたてる黒髪の男の子がいた。

私より年上、かな。ソファーの上で足を組み、両腕を頭の下に敷いて枕にしている。きゅっと結ばれた口と切れ長のツリ目がクールな雰囲気を漂わせていた。

ちょっとかっこいいかも……。そう見惚れてしまったのが運の尽き。

『うわああ！！』

足元を見ていなかった私は敷いてあるマットに躓いた。

持っていたプリントが舞い、あろうことかそのうち1枚がソファーで眠る彼の顔に落ちてしまった。