風紀委員長のわんこですが (ページ20)

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19匹目　祝② ページ20

翌朝、応接室

私は透明な細い花瓶に花をさしこむ。

紫色のアヤメの花だ。

美しく広がった花びらが口を開く獣のようで

たしかな存在感が委員長っぽいなあと思った。

花の飾りつけはじゃんけんで負けた私がやることになった。

草壁さんいわく"危険をともなう重大な仕事"らしい。

委員長にバレたら…と思うと少し気が重い。

『……よしっ』

棚の上に綺麗に置かれていることを確認すると

少し手直しして応接室を後にした。

✧

規則正しい足音がする。

『あ……』

顔を上げると

廊下の向こうから委員長が歩いてきていた。

タッタッ

どんどん近づいてくる。

委員長はもうアヤメの花を見たのだろうか

それを飾ったのが自分だと気づいただろうか

う……なんか緊張する……

『お、お疲れさまです』

軽く会釈する。

委員長は視線だけで返した。

すれ違う瞬間、息が止まる。

委員長の肩にかけた学ランがふわりと揺れた。

ホッと息をつき

歩みだそうとした私の足が

「ねえ」

その一言だけで再びガチガチになってしまった。

「あの花を置いたの、君？」

真っ黒い瞳が私を射抜く。

硬化は足からどんどん上にのぼっていき

のどを詰まらせる。

『い…いや………』

かすれた声を出す私にはおかまいなしで

委員長はまた近づいてくる。

触れるのではないかと思う距離まで顔を近づけて、

「同じにおいがする」

そう言った。

声なんてもうまったく出なかった。

それどころか脳天まで固まってしまったようで

まばたきすらできなくなってしまう。

「まあ、いいや草壁に聞くよ」

委員長は案外すんなりと後ろを向いた。

くるり

タッタッ

またゆっくりと歩いて角を曲がる。

『におい…かがれた……？』

私はやっと自由になった両手で熱い顔を覆った。