箱の男(本編小説より) ページ7
煩わしい鈴の音、ちりんちりんと、脳みそを揺らしてくるその音に気分が悪くなった。
思い出す、鈴を鳴らすような声と、顔と、あの女の、右側の口元についたホクロ。
何度も何度も何度も何度も、思い出す。
乱雑にポケットへと入れられた指輪の箱と、後ろ手に隠した二本の薔薇。部屋の扉を開ければ、人生最高の日になる予定だった。
揺れる影と、体に目を見張った。震える手で触れた肌の冷たさに、喉の奥が乾いていく。
目を見開くはずもない女の目が、そっと開いて己を嘲笑う。
「だから言ったでしょ」
細い細い首だった。薄い唇だった。黒い瞳で、よく笑った。
「おきて＿＿起きてくださいませ」
脳みそが覚醒する。
「あ゛……ああ、んだよお前かよ、羊野郎」
人の部屋に簡単に踏み入ってきた羊頭は、深々と頭を下げるなり、夕食の準備ができていると宣った。汚い部屋で足の踏み場もないはずなのに、軽々と部屋を出て行く後ろ姿を、呆然と見守った。
壁掛け時計へと目を見遣る。自分の趣味とは真反対のそれ。針が動くたびにカチリと音がして、己を苛立たせた。
舌打ちをしては、髪の毛を掻き乱そうとしたが、その手がぴたりと止まる。
段ボールの感触、手触り。
掻く髪の毛もなかったかと、手を下ろしてまた一つ舌打ちを。
座る場所も足の踏み場もない散らかった部屋で、空虚に響く音。その舌打ちを聞いて嫌な顔をする女ももういない。
手の中に残る細い首の感触を鮮明に思い出して、床に落ちていた写真を、またぐちゃぐちゃになるまで踏み潰した。
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本編の小説からです。あちらは比較的シリアスで殺伐としています。
一番過去に苦しめられているのはレオナルドかなあと、次点でタカシくん、同じくらいで将大と、ピエロはそうでもないかな、みたいな感じです。
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ぴよこ(プロフ) - ゆっくり夏姫さん» ゆっくり夏姫さんへ向けてなので印刷もなんでもしてもらって大丈夫ですよ！寧ろ印刷なんてしてもらえるような作品だと思っていなかったので、とても嬉しいお言葉です……ぜひぜひお好きなようにしてくださいませ！ (2021年4月12日 21時) (
レス) id: 56b6704cd6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり夏姫(プロフ) - やったー！え、うますぎん?印刷したい...。いいですか? (2021年4月12日 20時) (レス) id: 32504c8e03 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよこ(プロフ) - ゆっくり夏姫さん» お褒めの言葉有り難いです！りいぬくんですね、是非描かせていただきたいと思います！が、当方可愛い絵柄にならず思っていたものと違うとなってしまってもご容赦くださいませ･･･コメントありがとうございました。 (2021年4月11日 23時) (レス) id: 091e16276a (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり夏姫(プロフ) - え、自分で描いたんですか?うますぎません?? もしよかたら、すとぷりの莉犬くん描いてください！嫌だったらいいです^^ (2021年4月11日 21時) (レス) id: 32504c8e03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよこ | 作成日時：2021年4月10日 20時
