158話 旅行の計画 ページ9
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「絶対、だめ」
「……」
「はい、おやすみ」
「……」
「Aさん？」
「……おやすみなさーい」
寝室に2つ並べた布団の中。
今日一日、いつ切り出そうかと考えていた話しを
今、ここで和くんに切り出してみたけれど、
別に、ここぞと思ったわけでもなく
タイミングも掴めないまま今日が終わってしまう所だったから
今、話しただけで……
良い返事がもらえるなんて
もらえるようにうまく話せるなんて
これっぽっちも思っていなかったけど……
「今年の夏休み、いつもの4人と泊まりで旅行に行ってもいい？」と聞いたら
即答でダメだと言われました。
……まぁ確かに、中学生だけで外泊なんて
到底無理だと、承知してます。
でもね？由里子の叔母さんがやってるペンションでね？
「遊びにおいで」と言ってもらっていてね？
近くの牧場のほうでね？お手伝いなんかも予定していてね？
職場体験学習的なね？すごく健全な旅行なわけで、
由里子のおばあちゃんも一緒に行きたいところだけど
体力的なこともあってね？
由里子のお父さんはね、由里子がイヤだって言うしね、
って
沢山の正当な言い分も用意していたのに、
それを言わせてもらえないまま冷たく言い放たれた「絶対ダメ」と
突き放すような「おやすみ」がきたら
もう二の句なんか告げない……
……和くんは優しいから、
言い分くらいは聞く状況、作ってくれると思ったんだけど……
思わず洩れた溜め息と一緒に寝返りを打つと
「A」
和くんに名前を呼ばれて
背を向けた身体のまま「ん？」と返事をして
頭だけ和くんの方へひねった。
「どうしても行きたいの？」
「んー……別に」
誘われたから、ってだけだけど……
わたしの返事に
和くんが「ふはっ」と息を吐く。
「しょうがないなぁ……じゃぁ俺も行くよ」
「へ？」
思わず身体ごと、和くんに向き直る。
しょうがないなぁって……
どうしても行きたいって言ってないですけど……？
じゃぁの意味も
さっぱり分かりませんけど……？
「他には誰が来るの？保護者」
「……予定は4人だけ……」
「はい決定。引率者、俺。おやすみー」
「……」
「Aさん？」
「……おやすみなさい」
和くんが鼻で笑う。
その息遣いは、すごく楽しそうだ。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2017年6月3日 23時
