157話 筋合い ページ7
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side和
指輪を外して、正面の窓のへりに置いてある
小さな小鉢の中にそれを入れておいて、
Aの手の中のスポンジを掴んで
「お風呂入ってきな」ともう一度声をかける。
今度は俺の声、聞こえてるはずだけど
Aはぼんやりと立ち尽くしたまま
俺が今、指輪を入れておいた小鉢をじっと眺めていた。
ほんとに
なにを考えてるの？
「俺はどこにも行かないよ」
スポンジに洗剤を垂らして何度かこぶしを握れば
スポンジからはもこもこと泡がたつ。
「ずっとAの傍にいるから、心配しないで」
水を張った桶の中の皿を掴んで
スポンジを滑らせる。
気休めなんかじゃなくて
ただの本心なんだけどね、
Aはなんの返事もしない。
……何を考えてるんだろうね、ほんとうに。
微動だにしないAに
もう一度お風呂を促そうとした時だった。
「わたしがお嫁に行っても？」
そう言って俺を見上げるAの表情には
……憤りのような感情が読めて
……腹が立った。
「……お風呂、入ってきな」
俺から漏れるのは、苦笑い。
Aはそんな俺の表情を見たのか見ないのか
言われるままに無言で風呂場へかけていった……
溜め息しか出ない。
そんな顔される筋合い、ないよ。
"ずっと傍にいるなんて、うそ"
そんな顔で睨まれる筋合いなんか、ない。
お嫁に行っても？
なんだよそれ
どこへ嫁に行くっていうの……
俺は
そんなことさえ
させたくないのに
「ふざけんじゃないよ……」
なにを考えてるの、お前は。
俺はお前の
父親なんかじゃ、ないのに。
いつまでお前は
俺の娘でいるつもりなんだ……
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2017年6月3日 23時
