155話 ジョーク ページ5
・
だから、嫌なのよ。
分かってる。
別に……和くんも雅子さんも
相葉君の言った事を鵜呑みにしたりしない。
相葉君だって
二人に結婚して欲しいなんて
本気で思ってない……多分。
そんなことは分かってる。
分かってるのに。
2人が笑い合うだけで
視線を合わせるだけで
馬鹿みたい、心がざわつく。
馬鹿みたい
馬鹿みたい
馬鹿みたい
「ごめんね、雅紀」
誰の声も耳に届かず
握ったスプーンを動かせないままでいたわたしに
良く通る和くんの声が響いた。
「俺にはAがいるから、雅子さんとは結婚できないよ」
その言葉を聞いて
隣の和くんに視線を向ける。
和くんが得意げな顔して……頬杖をついてる。
「Aちゃんは娘みたいなものでしょ〜？」
相葉君が頬を膨らます。
「でも残念〜、俺達、血が繋がってないから。結婚できちゃうんだなぁ〜」
和くんが、ぐふ、と鼻を鳴らして
わざとらしく肩をすくめて……
相葉君と雅子さんが噴き出した。
そんな2人を気にも留めず
和くんが「ね、A？」なんて
首をかしげて笑顔を作るから……
ビックリして、恥ずかしくて
動揺して……
「バカなの？」
わたしの口からは、そんな言葉が飛び出していた。
それを聞いた相葉君と雅子さんは
今度こそ盛大に笑い声を上げて……
「和くん、ふられてるじゃーん！」
「がんばって、和也君！」
和くんも、つられるように
けらけら笑った。
……ダメだ
今度はわたしが……顔、真っ赤だ……
和くん、ダメだよ。
ダメなんだよ。
そんなのわたしには
ジョークにならない。
”じゃぁわたしと、結婚してくれる？”
本気でそう問い詰めたら和くんは
本気で戸惑って
ここぞとばかりにそんな時
わたしを娘扱いするんでしょ？
ダメだよ、和くん
ダメだよ
ほんとにわたしは、
そんな些細な言葉に
涙が出そうになるの。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2017年6月3日 23時
