151話 キョウダイなら ページ1
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和くんが珍しく
休日出勤で家を開けている土曜日の夕暮れ時。
「Aちゃん、お皿どれ使ったらいい？」
「あ、今だします」
「あー！Aちゃんは宿題してて！俺がやるから！」
「もう終わったし……」
「台所狭いから！Aちゃんは向こうで……」
「だったら相葉君が向こうで宿題してきてよ！」
わたしと相葉君のやりとりに
雅子さんがくすりと笑う。
我が家の狭い台所では
相葉君と雅子さんが夕飯の支度をしていた。
あれ、以来……
相葉君がわたしにベッタリくっ付いてくるようになって
雅子さんは和くんと頻繁に連絡を取るようになった。
この間
「迷惑を掛けたお詫びに」と相葉家の面々に
食事に連れて行ってもらったというのに、
今日は2人、揃って我が家へ来たと思ったら
「和也君がいないっていうから」と
わたしの世話を焼いてくれている。
それが和くんの差し金なのか、
雅子さんの勝手なのかは知らないけど……
それを確認する連絡を入れるのも
なんだか億劫なんだ。
相葉君が前にも増してベッタリしてくることは……
別に構わない。
「Aちゃんは俺のキョウダイだから」と言って
わたしを心に拠り所としていることに、悪い気はしないし
支えてあげたいとも思う。
だけど正直、
雅子さんのことは、知らない……
相葉君がそうなように、雅子さんは和くんを
心の拠り所に、しているのだろうか……
雅子さんの指に
未だに光る、結婚指輪。
それがわたしの醜い心の拠り所で、
だけど拠り所としていることで
和くんの指に光る結婚指輪への
嫉妬と嫌悪が露呈して
最低なスパイラルを作り出している。
「雅紀、あとはやるから宿題」
「えっ！」
「Aちゃんに見てもらってやってきなさい」
「……は〜い」
ごめんね、Aちゃん と
雅子さんに謝られる。
こちらこそ、ご飯の支度……と頭を下げて
雅子さんが、ニッコリ笑う。
「宿題、簡単？」
「さぁ？相葉君のレベル次第」
「まぁ、今日は先生がいるから余裕だね！」
「じゃぁ質問は一回だけにしてね」
「なんでっ！？」
相葉君が言うように
わたしと相葉君がキョウダイなら
和くんと雅子さんは
夫婦ということになるのかな。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2017年6月3日 23時
