検索窓
今日:22 hit、昨日:13 hit、合計:266,377 hit

忘れたフリ ページ9

本当は覚えている。


まだ小さかった彼の事を。


私も小さかった。


けど久々に会った彼は、私よりずっと大きくなっていて。


強くなっていて。


けれど、忘れたフリをして。


知らないフリをして。


鬼殺隊に入って、死んでしまった人たちを、今までたくさん見た。


もうそんな姿を見たくない。


情が移らないよう、忘れたフリをして。


けど彼は、宇髄くんは、私よりきっと強くなる。





「Aッッッ!!!」





油断した。


鬼との戦いの最中。


気を取られて。


私はもう、彼にかなり情が移っていた。


突き放すには手遅れだった。





「おい……嘘だろ…!?なあ!!」





人間と鬼の回復力は違う。


いくら柱と言えど、鬼の手にかかれば取り返しのつかない傷を負うこともある。





「どうして俺を庇ったんだ……!!」





どうしてって………


もうこれ以上、死ぬのを見たくなかったから。


守れないのは辛いから。


目の前から消えていなくなってしまうのは、嫌だから。


そう言いたいのに、口が開かない。





「くくく………久しいなあ、久しいなあ。その顔、見覚えがあるぞ。もう何年も前だ。お前の目は綺麗だった」


「目………?」


「何だ?知らないのか?そいつの目は、俺が奪ってやったのさ。家族の目、もろとも。全て」


「……!!」





そう。


こいつは私から私の大事なものを奪った。


私の家族を。


私の目を。


忘れもしない。


その声。


目がなくても、お前が今どんな顔をしているか、嫌でも分かる。





「さあ、今度はどこを奪って欲しい?だがまあ、その命も風前の灯。奪ったところで、何も面白くもないか」


「てめえ……」


「さてさてどうしたものか。今度はお前を殺して、そこの男の目でも奪ってやろうか?そのぎらついた目。荒々しく、刺々しい、煩い目を」





ああ、悔しい。


嫌だ。


私が死ぬのも嫌だか、宇髄くんに手を出されるのも。


死にたくない。


死にたくない。


こんな所で、あいつの目の前で。





「A……?」





痛む体にムチを打つ。


立て。


立ち上がれ。


痛みに負けるな。


今ここで立ち上がらなければ、宇髄くんがやられる。


それは嫌だ。

くだんの鬼→←お礼



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (179 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
360人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 宇髄天元
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ずんだ (旧 國子)(プロフ) - レンサさん» コメントありがとうございます。私の所は全巻売り切れで、ノベルしか置いてませんでした(泣)よもやこれほどとは……。続編の更新、頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年10月16日 0時) (レス) id: 96c933232a (このIDを非表示/違反報告)
レンサ(プロフ) - この話ずっと読み返してます。私の行きつけの書店でも所々巻数が抜けていて店員の人に取り置きさせて貰いました。続編の方も読みます。頑張って下さい。 (2019年10月15日 16時) (レス) id: 6d7ff987c8 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ (旧 國子)(プロフ) - シュウさん» コメントありがとうございます(*´∀`)読み返して自分でも「あれっ!?」ってなりました。上弦の月て………(;´∀`)書いてるうちに頭の中ごちゃごちゃになってました。すみません、ありがとうございます!あとで直しておきます( ;∀;) (2019年10月14日 12時) (レス) id: 96c933232a (このIDを非表示/違反報告)
シュウ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。少し気になつたのですが、宇髄天元の目と腕を奪ったのは十二鬼月の上弦の陸です原作読まれてないとの事なので恐らく情報がごっちゃになったかと…これからも更新頑張ってください! (2019年10月14日 8時) (レス) id: fbf674f14e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ずんだ (旧 國子) | 作成日時:2019年10月10日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。