～箱庭～ワタシとアイツのその頃【N.K】 (ページ10)

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・09　ワタシページ10

ロケ地だったあの町で、町の人達を抽選で招待する試写の話しを聞いた時

正直ドキリとした。

だって、あの町にまた行けるってことだ。

しかも、あの時お世話になったさいぞうやのマッチ先輩もアイツも

屋敷を提供してくれたアイツのじいちゃんも

それから庭の植木を担当した植木屋も、草花を担当した園芸家も

とにかく撮影に関わった町の人は特別招待で試写に来てもらう事になったから

絶対に会えるよなって思ってて。

なんか、毎日を平和に過ごしていた俺の頭は

平和ボケしてたのか何なのか、アイツはきっと来るって思い込んでいて、

だから招待した席が、最後の最後まで空席だったのを見た時は

落胆と動揺と戸惑いが隠せなくて、帰りのホテルで行われた飲み会の席でも

その表情をあらわにしたまま、重苦しい空気を辺りに振りまいていた(らしい)。

試写の始まる前、さとみちゃんが俺に「あの子来てるかな？」と聞いてきた。

「あの子って誰ですか？」

「もう～分かってるくせに……照れてるの？」

「何で照れるの？(笑)」

「久しぶりでしょ？会うの。今どんな気持ち？」

「いや～別に……今更どうもこうもないよ。……てか

なに？俺が待ちに待ってたみたいな言い方しないでくれます！？」

「あはは、そっかぁ、そうだよね、今更か。」

さとみちゃんは俺の“今更”に納得してくれたみたいだけど、きっと

俺がアイツを探しちゃう視線とか、いない事に対する動揺とかを

敏感に察知してしまったと思う。