・ラスト ワタシ ページ48
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「それで、返事は？」
抱きしめたまま、芽衣子に問い掛けると
芽衣子は俺の肩の上で頭をぐりぐり左右にふって
……お前さ、俺の服で鼻水拭いてない？(笑)
「……行く。」
芽衣子はふて腐れた子供みたいな声で、そう言った。
そう返事をするのは分かっていたけど、聞いたら嬉しくてたまらなくて
俺は芽衣子を抱きしめた腕に力をこめて、大きく息を吸い込んで、そして吐き出した。
その瞬間、
「庭、すっごいくたびれたね。」
全然気に留めていなかった庭が、ふっと視界に入った。
「……ショック？」
上目遣いで眉尻を下げた芽衣子が心配そうな声を出す。
庭の方に体を向けて、その全貌を凝視した。
奥の家庭菜園と、一本の木以外の全てがなくなっていて
芝生の手入れもされていない庭は、昔の見る影もないほどにくたびれていて
その役目が終わった事を俺に教えてくれた。
「ううん、嬉しい。」
そう言って、芽衣子の頭に自分の頭をつき合わせる。
「心置きなく連れ去れるじゃない。」
俺はビックリするほど、
清々しくて、心地よくて、
満ち足りた気持ちでいっぱいだった。
2人で腰に手を回して寄りかかり合って
くたびれた庭を眺めていると
ただ1人、庭に佇む木が携える木の葉が
夏の風に揺れてさわさわと音を立てた。
それはまるで俺と芽衣子に
「行ってらっしゃい。」って、
言っているようだった。
End
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
