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「あ、やべぇ、持ってきてなくねぇ？から揚げと含め煮。」
「えぇー何で忘れられるかなぁー！」
ガラスの大皿に惣菜を移し変えている途中で、父がやべ！って顔をしてわたしを見た。
「とって来ればいいんでしょ？わ・た・し・が！」
「ごめーん☆」
オジサンのお茶目全然可愛くないし……
ワタシの肩幅よりも全然大きいケースに入れられた惣菜を
しかも2つも運ぶのに手でっていうのは無理なので、従業員用通路から出て
道の駅共用の台車を借りて、家へ向かった。
途中、斉藤のおばちゃんとすれ違って
「おはよう、元気になってねぇー。」と声を掛けられた。
わたしが外をうろうろするようになってから、
会うたび毎回必ず「元気になって……」って声を掛けてくれる。
わたしの引きこもり生活を、町のみんなが心配して
そして元気になった今こんなに喜んでくれるとは思ってもみなかった。
ていうか、町中に浸透していたことに驚く、わたしの状態が……
お父さんお喋りじゃないですか……
わたしの中の色んな記憶が、過去から今へ、今から未来へって
彼から、ニノへって……塗り替えられていくように
わたしの下らないこだわりの様な思い込みの様な病気は
徐々に消えてなくなった。
たまに……
一人で外をぽくぽく歩いていると……
元気になったよ、ニノ
って、
思いながら、どこまでも悲しくなる事があって
それはそれで、落ち込むから辛くって
だって、ね。
元気になったところで
“アナタが望めば、会えますよ？”―――
会えるわけでもなくて。
わたしの中で彼への気持ちやあの時の情景が
過去のものになってくれたのに
今度は新しくわたしの中に
ニノに対してどうしようもなく焦がれて空しくなる感情が生まれてしまった。
「あった、めっちゃ分かりやすいところじゃん……」
普通に、作業代の上にでーんと2つのケースが置かれているのを見て苦笑い。
店の外の台車に、1つずつ運んでは乗せて
最後のから揚げを……って重っっ！！
含め煮のケースに比べたら、ってくらいの重さではあるけど
調理場から店の裏を抜けて、外の台車まで行く道のりがそこそこ憎い。
よたよた横歩きしながら店の裏を歩いて、
外へ続く開け放たれたままのドアの前へ辿り着いて
よし、と思った瞬間
台車の前にぼんやりと立つ人影を見つけて
思わずお惣菜のケースを落としそうになった―――
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
