・38 ワタシ ページ39
「今日、休み？」
後ろで寝ていたはずの翔さんがいつの間にか起きていて
窓の外のシャッターが下りた店を凝視していた。
「いや……わかんない。」
俺がそう言った後に、誰も言葉が続かない。
「どうする？」
「家行って、インターホン鳴らせば？」
ジェイがそう言って、相葉さんが「どうする、下りる？」って言った瞬間
「あ、あそこ行こうよ。」と、翔さんの声が飛ぶ。
「道の駅。あっちにもあるんでしょ、ニノ？」
確かに向こうにもお店はあるけど、あっちはマッチ先輩専門。
向こうにいる可能性は、限りなく、低い。
「行こう。行ってみるだけ行ってみよう。」
ジェイはそう言うと、車をゆっくり発進させた。
「ニノまだ早いよ！落ち込まないで！」
「落ち込んでねぇから。」
相葉さんが手をパンパンと叩いて身を乗り出す。
うるさいなぁほんと。
正直もう帰りたいよ。
でも俺の気持ちを無視してジェイの運転する車は、1分も経たずに道の駅に到着する。
「あぁ〜俺お腹空いたかも。」
「俺も〜せっかくだから何か食べる？」
「お弁当やさんなんでしょ？彼女の店。」
「おっ、じゃぁそこで頼む？」
「人の気も知らないでみんな呑気っすねぇ〜。」
素直にそう言うと、みんながふははっ！と声をあげて笑った。
みんなどうしてそんなにポジティブなわけ？
一番に店内に入っていったのはジェイ。
開店したばかりの店内にはまだ誰もいなくて、俺達5人が入ればもういっぱいいっぱいだった。
そして、店内には、準備もそこそこのマッチ先輩が
「おおっ！？これはこれはっ！？」って
あの頃と何も変わらないデカイ声で、ビックリした顔をして俺達の事を順番に眺めた。
「どーもー。」
「こんにちはー。」
「わっ、うまそう！」
みんなしてショーケースの中の惣菜を眺める中で、翔さんだけが
「映画の撮影時にはウチの二宮がお世話になったそうで……」
とか、マネージャーみたいな事を言ってマッチ先輩に頭を下げていて。
「おお！！櫻井翔か！！おお〜！お、二宮ァ！」
翔さんとがっちり握手をしたままで、顔を俺の方に向けて
すっごい笑顔で、懐かしい名前の呼び方をするマッチ先輩だけど
正直、俺は懐かしさに浸るヒマは全くなかった。
だって、このこ狭い店内の、どこを見回してもアイツがいないんだから。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
