～箱庭～ワタシとアイツのその頃【N.K】 (ページ38)

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朝9時には、アイツの所に着くように

マネージャーに車を借りて、7時半にはホテルを出た。

本当にみんなして着いてきて、ジェイなんか俺を助手席に座らせて自分は運転までしてる。

「みんなして面白がってさぁ……」

「面白がってないよ！！みんな応援してるのっ！！」

相葉さんは身を乗り出して力強くそう言ったけど

あの、両端の2人、早速寝てますからね？

昨日の夜、もしもジェイが部屋に来なかったら

俺は相葉さんからのインターホン連打攻撃を

対応せずに鳴り止むまで、シカトしていたかもしれない。

それかもしくは……ジェイが部屋に来なくても

相葉さんの攻撃に、すくわれていたのかもしれない。

今こうして、アイツのいる町へ向かっているこの状況は

否が応でも現実になる運命だったのかもしれない、なんて

ちょっと都合の良い事を考えて、

俺は窓の外を眺めながら、少し笑った。

散々、

散々、嫌な事ばかり考えて、

ダメかもしれない、無理かもしれないと、思っていたくせに

アイツのところへ向かう俺の気持ちは

何故か無意識的に晴れやかで仕方がなかった。

ジェイが、相葉さんが、

午後からのリハーサルの件で会話を途切れさせないでいてくれることが

俺の気持ちを楽にしてくれたのかもしれない。

当時の記憶を手繰り寄せ、あの町への道のりをジェイに告げると

クルマは徐々に、懐かしい風景へと近付いていった。

信号を右に曲がって橋を渡って少し行けば

アイツの、ちょっと浮いてるおしゃレトロな店が見えてくる……

はずだった、いや……

確かに、俺が言ったとおり、そこには店があったけど

「……ここ？」

ゆっくり徐行した車の窓から見えたあいつの店には

シャッターが下りていて……

とっくに開いていてもいい時間のはずなのに

営業している気配は、まるでなかった。