～箱庭～ワタシとアイツのその頃【N.K】 (ページ32)

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会いに行くと、宣言してしまえば腹もくくれるってもんで

もやもやと心の中に抱えていたわだかまりが

日を追うごとに少なくなっていくのを感じていたと同時に

別の緊張感が日ごと俺を覆っていたらしくて

「ニノ、大丈夫？」と

2人きりの楽屋で声を掛けてきたのは翔さんだった。

「え、何が？」

「会えそう？」

「あぁ……」

「もう、平気？迷ってない？」

……そんな風に聞かれると、意思がぐらぐらと揺らぐ気がした。

「迷っては、ないですけど……どうですかね。

向こうが……まだ治ってなかったらって思うと、ね、

困っちゃうんですけど……。」

曖昧に返事をした俺の隣に翔さんは腰を下ろすと

少し、言いにくそうにしながらケータイを取り出した。

「あの、ね、余計なお世話かなとも思ったんだけどね。

その、お店の電話番号が分かったんだ。」

意外すぎる言葉に「えぇっ！」と声をあげて翔さんから身を引いた。

「道の駅に電話して、提携してるお店の事について聞いたら

普通はその提携してる店舗ごとに連絡先ってないんだけど

その、彼女のいる店は、もともとが道の駅の出来る以前から店舗として

存在してたから、その本店の方の連絡先を聞けたんだよ。」

俺は翔さんが、ケータイの液晶に指を滑らせるその指だけを見つめていて……

「分かってるよ、すっげー余計なお世話な事は。

でも、もしもを考えたら……俺は彼女の事よりもニノの事が心配だから……」

翔さんの方へ視線を向けると、

眉尻を下げて俺を見ている翔さんの顔がすぐ近くにある。

「今の彼女の状態を聞いて、それからどうするかどうしていこうか

考えてもいいんじゃないかって。

会ってしまったらもっと……辛い可能性も、あるかもしれない。」

考えないようにしていた事を

翔さんが一生懸命になって考えていたかと思うと

あぁ、やっぱり無視できねぇかって思って

苦笑いしか出てこなかった。