・16 ワタシ ページ17
辛いんでしょ？って聞かれて、うん…なんて言えないでしょう！
「いや、辛いといいますか……」
「ん？なに？」
「いや、ちょっと待って？いつのまに俺の話し？
俺はただ単に興味本位で翔ちゃんに今の気持ち聞いただけで……」
そこまで言って翔さんの顔を見ると、目を細めて俺を睨んでる。
本当に睨んでいるわけじゃないのは分かるけど、でも
確かに今のは失言だった……あぁもう俺、どうかしてる……
「それが本当なら、ニノサイテー。」
翔さんはそう言って笑って、また雑誌に視線を落とした。
本当にイヤだ、この、翔さんの気遣いが……
付き合いが長いというのは、時に残酷。
失言するほどに動転してる事も、それに気付いてどうかしてるって
自分に苛立っている事も、翔さんには恐らく気付かれてしまっていて
だからこそそれ以上何も聞かないで、
適当にふざけた事言って終わらせてくれる翔さんの気遣いが
すごく痛い。
俺はゲーム機をぱたんと音を立ててテーブルに置いてそのまま突っ伏した。
「……翔さん、俺、どうしたらいいの？こんなの、初めてなんだよ……」
テーブルに顔を埋めて、声を搾りだした。
「俺、翔さんの気持ちが痛いほど分かったよ。
どうしようもなく焦がれて、手に入れたくて仕方ないって気持ちが
事あるごとに湧いてきて、苦しいんだ……」
顔を上げるのが怖かった。
こんなにダイレクトに気持ちを吐き出したの、もしかしたら初めてかもしれなかったから。
だって言わなくたって理解してくれる人だったし、おれ自身、
こんな事でこんなにも弱っちくなったの初めてで。
“昔は俺のことバカにしてたくせに”って
“何で諦めないんだよ”とか“いつまですがりついてんだよ”とか
思ってたくせにって言われるかもしれないなとか思ったし。
だけど、そんな事言う人じゃないことも分かってる。
分かってるから、俺に掛けられる言葉が絶対に優しい事が分かるから
だから俺は感極まって涙を浮かべてしまわないように
身体を強張らせてテーブルに突っ伏して、翔さんの言葉を待つしかなかったんだ。
「ごめんね、ニノ。」
翔さんの優しくて低い声が、頭の上から降ってくる。
「俺にも、分からないんだ。だって俺も、現在進行形で辛いんだもん。」
翔さんの口から出た言葉は、慰めでも労わりでもなかった。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
