～箱庭～ワタシとアイツのその頃【N.K】 (ページ11)

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・10　ワタシページ11

「ニノ……やっぱりまだ好きだったんじゃん。」

グラスを片手に、さとみちゃんが俺のところにやってきたかと思うと

すっごいウルサイ事を言ってくる。

「うるっさいなぁー……」

「だってすっっごい悲壮感漂ってんのー！」

お酒が入っているせいか、上機嫌でケラケラ笑っている。

「……悪かったですね。ワタシとっても乙女なの。」

「本当だねー！かわいいー♪」

俺の頬をつつく指を払いのけても、さとみちゃんはふふっと楽しそうに笑った。

「……はぁ～あ。俺、なにやってんだろーなー。」

思いっきり脱力して、グラスの残りを流し込む。

突然、アイツの事がフラッシュバックした。

笑ってる顔も、怒ってる顔も、泣いてる顔も、

サヨナラした時のことも。

もしかして、まだ外に出られてないの？

試写の招待を受けて、どう思ったんだよ？

俺のこと、今はどう思ってるんだよ？

来たかったのに、来られなかった？

それとも、来たくなかったの？

考えていると、自分が涙目になっていく事が分かる。

「……ニーノッ。」

隣にいるさとみちゃんが、驚く様子もなく俺の顔を覗き込もうとするから

俺は顔をそむけて涙を拭くと、テーブルに突っ伏した。

「……泣きなよー。」

「いや、別にそんなんじゃないから。」

「……楽になりなよー。」

「泣いたら楽になるってわけじゃないし。」

そもそも俺なんで泣くの。

何でそんなに悲しいの。

「俺、部屋行くね。」

めちゃくちゃになった心を落ち着かせたくて、

俺はさとみちゃんの返事も聞かずにその場を離れると

スタッフや監督や共演者に軽く挨拶をして

よねに明日の予定を聞いて

自分の部屋へ戻った。