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つい、言ってしまったけど
恐らく櫻井は
「俺の彼女になろうなんざ100万年早い」とか
「彼女になりたかったらもっと顔面整えてこいや」とか
憎まれ口を叩くに決まっていて、
それに対してわたしもこれでもかって位にふざける準備は出来ていた。
だけど櫻井はわたしが想像していた言葉とは違って
「ついに来たか……」と呟くと、さっきの店にいた時のように
「うーん」と唸って唇を指でとんとん突き、空を見上げた。
「ついに来たかって……」
「いつか来ると思ってたもん。」
「……何それ。」
「お前が俺の事を好きだってことぐらい知ってた。」
相変わらず空を見上げたまま進む櫻井の一歩は
2秒くらい掛かってるんじゃないかって位に遅い。
「……でしょうね。」
「はっはっは。」
「知ってて今までの態度？考えると殺意が湧く。」
「怖いなぁ。」
もう一度「うーん」と唸った櫻井は、意を決したかのように両手をぱちんと叩くと
いつもの速度で歩き出して、わたしに話しをし始めた。
「俺は悟ったんだよね。学生の間にさぁ、する恋愛なんて所詮、遊びなんだよね。」
「……」
「だから残念だけど、お前の気持ちには応えられない、今は。」
“今は”？
振られてしまったと思った瞬間に、希望があるワードを耳にしたわたしが思わず立ち止まると
櫻井も立ち止まり、身体を斜めに傾けてわたしをじっと見つめて笑った。
「どうせさ、別れがきて今の関係壊れるような事になるんだったら
ずっと今のままがいいんだよ。」
始まる前から別れの心配をするくらいだから、
やっぱり櫻井はわたしを恋人にするつもりはなくて
ずっと、今のままがいいっていうんだね。
でも、ずっと、ってところに、愛を感じるべきなのかな？
「そもそも恋人と友達の違いって接吻と夜の営みがあるかないかって事ぐらいなもんでしょ。」
「ぶっ！(笑)」
やっぱり振られちゃったって、苦笑いが漏れるわたしを見て
櫻井がわたしの頭に手を置いた。
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作成日時：2014年8月29日 22時
