金曜日 sideS ページ10
初めて出向いた第三工場は
色んな意味で刺激が多くてどっと疲れた。
新しい工場というのは配備される人間も新しくて若々しくて、
イコールエネルギッシュでフレッシュで活気に満ちてる……とか
それに圧倒されて疲れたっていうならまだよかった。
今時の若者っていうのかな。
覇気がないし、ヤル気もないし、
とにかく、ぬるい。
あんな場所に俺が飛び込んでみろ。
そんで今みたいなやり方で纏めようとしようものなら……
間違いなくリタイアする人間が続出するんだろう。
それでもいい。
それでもいいから、俺のやり方で纏めていくのか……
第三のぬるま湯に、俺が慣れなきゃいけないのか……
考えていると、頭が痛い。
松本がいつもストレスを溜めて帰ってくるのが
今になってよく分かる。
重たい身体を引き摺るように車から降りて、
見慣れた第二工場の従業員専用ドアを開けると
一番に飛び込んでくる、松本の顔。
あぁ、お前には話したいことがたくさん……
と思ったら、
その傍らにちょこんと、
Aさんが座っている姿を見つける。
潤「おかえり、翔さん」
翔「おう、ただいま」
彼女は……会釈をしたのか、下を向いたのか……
挙動不審に頭が揺れる。
おかえりなさい、とか……
お疲れさまですとかくらい、言ったらどうなの？
そう思いながら、ゾクゾクする。
ああもう、ほんとうに……バカな子だよね。
第三のことを考えてイライラしていた頭が
スパッと切り離されて、俺の後ろにごろんと落ちていくような感覚。
彼女を見ていると、自然と気持ちが切り替わる。
彼女をいじめたくなる衝動で、
ワクワクとゾクゾクが止まらないんだ。
いつからだろう。
彼女を愛しいと思う気持ちと同時に
自分の歪んだ性癖に気付いたのは。
いや、気付いたというよりも……
彼女によって育まれたというべきか(笑)
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2016年7月19日 0時
