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和也「現場のお嬢様方が嬉々として慰めてるからね。Aのこと。
あんなに言わなくていいじゃんねー？いちいちぐちぐち怖いよねー？ってさ。」
ああ……そうか。
その時の情景が目に浮かぶようだよ。
聞いてくださいよー二宮さん！
さっき櫻井さんめちゃくちゃ怖くって〜！
ひどいよねー？あそこまで言わなくていいのに〜！
Aさん、かわいそう〜……
……虫唾が走る。
ふっと鼻で息を吐いて肩を落とせば、
ニノはもうそれ以上何も言わなかった。
俺は非力だ。
あんな方法でしか彼女を守れない。
現場の連中を満足させる方法でしか
彼女を守れないなんて……
そんなの守ってるって言うのか？
そもそも本人が……
現場の連中からの嫌がらせよりも、
俺からの叱咤に音を上げて去っていくような事があったらどうすんだよ。
……だからって
自分でいじめて、自分で慰めるなんて、悪趣味過ぎる……
・
定時のチャイムが鳴ると、彼女は事務所に帰ってくる。
現場での作業が終わったら、今日一日の作業報告書を提出しなければならないから。
何時に何を、どれだけやったかをさーっと書けばいいだけでさほど時間はかからないけど
俺もそれに目を通さないといけないから
否が応にも多少の残業が発生する。
事務所に帰ってくるなり彼女は
視線を送った俺に向かって、ペコリと頭を下げた。
さすがにもう言う事なんてない。
俺は無言で手元の資料に視線を落とすだけ。
……彼女は、今、どんな気持ちでいるだろう。
程なくして報告書を持った彼女が「お願いします」と
俺のデスクへやって来る。
ざっと目を通して……智君に手渡した。
智くんがハンコを押したら、それで終わり。
今日も1日、お疲れ様でした。本当にね。
俺は報告書を手渡した流れのまま立ち上がって、
彼女の横をすり抜け、松本の後ろを通って、事務所を出た。
事務所を出てすぐ左隣にある自販機で
微糖の缶コーヒーを1つと、ブラックの缶コーヒーを1つ買う。
と、彼女が事務所から出てきて、
自販機の前の俺と出くわした。
A「お先に失礼します、今日は、すみませんでした。」
翔「うん、お疲れ。」
頭を下げている彼女から、表情は読み取れない。
俺は2つの缶コーヒーを握ったまま、
彼女の横をすり抜け、事務所の中へと戻っていった。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2016年7月19日 0時
