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翔「分かってて何で出来ないの」
A「すいません……」
翔「すいませんじゃなくて出来ない理由を聞いてんだっつーの」
彼女は、黙り込んでしまった。
この部品、組み立てにミスがあればそのままゴミ箱行き。
まだ作業に慣れない彼女が、ミスをして捨てることになったんだろう。
捨て方は当然、教えてもらった。
教わらなくても、金属が燃えないことは分かるはず。
それでもそのまま分解せずに捨てたのは……
現場の誰もが、そうやって処理しているからだろう。
翔「君は家でもそうなの？」
A「え？」
翔「燃えるゴミの中に缶とか入れて捨てる人？そういうことしても平気な人なの？」
A「……違い、ます……」
翔「じゃぁ何でここでは出来ないの？それってますますタチ悪いよね。自分以外のことはどうでもいいわけ？職場のことだからどうでもいいわけ？」
A「……そんなこと、ないです……」
翔「んじゃ何で出来なかったんだってッ！」
現場のど真ん中。
公開処刑なのは分かってる。
現場の女どもが
楽しくて仕方がないって空気を醸し出してるのも分かってる。
……彼女が悪くないことも、分かってる。
分解するには、手間と時間が掛かる。
だからみんな黙って、それをそのままゴミ箱行きにしてる。
事務所にいる俺達も、一度は注意喚起したけど、
その後のことは、黙認していたというのが正直なところ。
だからこそわざわざ
「捨ててあった」と言いに来た時点でおかしな話しなんだ。
未だに君たちも、処理せず捨ててるよね？って。
てかゴミ袋の中漁ったわけ？ねぇ？っていう話し。
どうせ懸命に部品を分解しようと奮闘する彼女に
「そんなことに時間掛けてる人誰もいないんですけど」とかなんとか言って
自分達のやり方を強制させたんだろ。
そんなことは、分かってる。
分かってるんだよ。
だけど、
彼女を守れないのも、俺の責任だ。
今の今まで黙認していなければ
こんな風に責めずに済んでいたんだから。
だけど、彼女も
「そのまま捨てればいいと言われた」と
それとなく言えるくらいの強さがあればいいのにと、思ったりもする。
だからいっそ、ほろりと涙を零して
それで現場のみんなを満足させてくれたら
もう終わりに出来るのに。
そう思っても彼女はこの時、絶対に泣かなかったんだ。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2016年7月19日 0時
