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潤「おかえり、翔さん」
翔「おう、ただいま」
櫻井さんは軽く右手を上げて
視線を潤君から、あたしへ……
だけど櫻井さんはそれをすぐに、自分の鞄へ移した。
鞄をガサゴソ漁りながらこっちへ近付いてくる櫻井さん……
缶コーヒー……突っ込まれませんように……
自販機のすぐ隣が事務所の入り口、
櫻井さんはどうしたって自販機の前は通らなくちゃいけなくて、
あたしはその自販機の前のテーブルにいるんだから
イヤでも目の前を通過されるわけだけど……
だってしょうがないじゃん！
5本も缶コーヒー買ったらさ！
1本ずつ取り出したらテーブルに置く……ってなったら
もう目の前のテーブルに座るでしょう！
櫻井さんは鞄を漁るのをやめて、今度はスラックスのポッケに手を突っ込んで
何やらガサゴソしながら自販機の前まで来て……
小銭を、出すのかな……
自販機の前でピタリと立ち止まり、
そして視線が、
テーブルの缶コーヒーに注がれた。
ひぃーーー！
翔「……なにその数」
A「……」(声が出ない)
潤「飲み比べしてたんだって」
ひぃ！
翔「飲み比べ？」
A「っそうなんです！一度全部の味の確認がしたいと思ってて！」
一瞬、
あたしなんでこんなに缶コーヒー並べてるんだろう？って
パニックになりすぎて目的見失いかけたけど
潤君の言葉にはっと我に返って、やっとこさ言葉が出た。
あたしが力んでそう言った言葉に櫻井さんは眉をひそめると、
「毎日、一缶ずつ飲めばいいんじゃないの……？」と
冷静な言葉を投げてくる。
A「そ、それだと……忘れ、ちゃう、ので……」
翔「……あそう」
A「……」
沈黙の間に聞こえるのは
現場の機械音と、潤君が缶コーヒーを啜る音……
そして櫻井さんの、冷たい、目……
……あああーーー！！
絶対いま「バカなヤツ」だって呆れられたーーー！
味も覚えておけねぇのかよ？って思ってるよ絶対ーーー！
ひぃーーー！
1人脳内パニック中、隣に立っている潤君が
「翔さんももらえば？」なんて余計な事を言い出すし。
無理！バカ！
あたしが口付けたやつなんて……
案の定櫻井さんは「は？」って顔で潤君を見つめて
そしてもう一度、テーブルに並んだ缶コーヒーとあたしに視線を注いだ。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2016年6月18日 23時
