95話 昔の商店街 ページ8
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そう広くない店内。他にもお客さんはいるけど、
わたしたち4人は誰も視線が交わらなくて、各々カゴにお菓子を詰め込みながら、
それでも声を張り上げて会話を続けていて、
「それじゃぁお母さんはAちゃんに頼もうかな」
「あー！風ぽんさり気なく愛の告白ー！？」
キャベツ太郎、よっちゃんいか、蒲焼さん太郎、
「なんでそうなるんだよ」
「えぇ、じゃぁあたしは長女〜」
フルーツ餅、ヨーグル、チョコ棒、ボンタンアメ、
「えぇーーーじゃぁ俺、弟ぉ？」
「相葉は犬！ペットだよペット！！」
「うわっ、ヨッシーひどーーー！！」
いつの間にかみんなのカゴの中は、
あっという間に500円に到達するほど、
懐かしい駄菓子たちで、いっぱいになっていく。
駄菓子って、昔の食べ物って感じがするのに、
自分達にとっても馴染み深く懐かしく感じるのはどうしてだろう？
「時々無性に食べたくなるよね〜」なんて、由里子も言ってる。
昔はよく和くんに連れられて、駄菓子屋さんに行ったっけ。
というより、わたしの住んでいた田舎には当たり前に娯楽なんてなかったし、
お洒落なお店も、可愛いお菓子屋さんも存在してなかった。
古い商店が、無人駅の前にポツンとあるだけ。
だけどその商店があたしは大好きで、ちょっとした日用品だったらここで揃うし、
傍らで売っていた駄菓子は、あたしにとっては特別なおやつだった。
「ずいぶんと種類が豊富ですこと」
和くんはわたしが駄菓子を選んでる横で、
適当に手に取った駄菓子のパッケージをまじまじと眺めて、
そしてすぐ元の場所に放り投げる。
「かずくんもおやつ、何か買ったら？」
「んふふ。そうね。買おうかな」
わたしに促された和くんは、さっきまでの退屈そうな顔をやめて、キラキラした顔をして、
自分が昔好きだったお菓子、よく食べていたお菓子、
食べたかったけど手が出なかったお菓子、
昔からあるけど、装いが変わってるお菓子っていうのを……
楽しそうに話しながら、次々カゴに放り込んでいって、
「なんだこれ。どんだけ食うんだよ？」
お菓子でいっぱいになったカゴを見て、わたしと顔を見合わせて、
照れたように、でもすごく嬉しそうに、
口を開けてのけぞって、大きく優しく、笑ってったっけ。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年10月7日 0時
