110話 子供の恋心 ページ23
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side和
Aに好きな男ができたらどうするかと潤に問われて、
子供の恋愛に興味はないと、
そんなようなことを、言ったような気がする。
でも、待って。
おれ自身はどうだった？
子供の頃からAの事が好きで、
誰にもさわって欲しくなくて、
俺だけのものにしたくて、
……子供だったぶん、
膨れ上がって溢れる気持ちはとめどなく、
そして素直で、純情で、
本気だった。
……いま俺は、
潤に言った言葉を、ものすごく後悔している。
目の当たりにした現実は恐ろしくて、
今すぐどこかへ、逃げてしまいたいくらいだった……
「………それは」
あぁ、肩は……
恐らく日に焼けて、赤くなっているんだろう。
だけどそんなの、構う余裕なんかない。
俺はAの「和くん、痛い」の言葉も無視して
Aの身体をぎゅっと強く抱きしめる。
「それ、は……つまり……どっちが、好きなの？」
「……え？」
Aの顔が見られない。
真っ直ぐ立てる気がしない。
……あぁ、俺……昔と何も変わってない。
Aを１から育てても、
なんにも変わらない……
俺はAの、
父親には、なれない……
「俺……おまえのこと……」
「あっ！和くん違うよっ！？そういう意味じゃない！」
剥がそうとしても離れない俺の背中を
Aにバシバシ叩かれて
一瞬、力が抜けた。
見計らって俺から抜け出したAは、
涙の引っ込んだ顔で俺を見上げると
また、泣きそうで、
それでも笑いが勝った、はにかんだ笑顔を見せた。
「あの、失恋したとか、どっちが好きとかじゃなくて、
その……風間くんが、他の同級生よりも大人びて見える理由を知ったら……」
ぐしぐしっと鼻をこすって
すぅっと息を吸い込むA。
「そしたら、なんか……健気と、いうか……切なく想えて……」
えへへ っと笑ったAは
頬っぺたを指で優しくぽんぽん撫でて
「応援したいなって、思ったら……泣けてきちゃった……」
涙のせいで焼けたとこ痛い…
そう言って頬っぺたをぽんぽん撫でながら
「……失恋したわけじゃないんだ？」
「やめてよ、どっちのことも全然好きじゃないし……」
や、友達としては好きだけど……って
また、ぐすぐすと、涙を零すA。
……あぁ
いつの間にかかいていた汗が冷えて
俺の背筋を震わせる……
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年10月7日 0時
