90話 新婚さん ページ3
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「やっと持たせてもらえたんだ？ケータイ」
そう言ってわたしの頭にポンと手を置くのは、潤君。
自分のケータイを取り出すと「俺の、登録できる？」って、
横からわたしのケータイを覗き込む。
「あ、俺いいって言ってないのに何勝手に、」
「あーうるさい。なに意味分かんないこと言ってんだよおとーさん？」
潤君に制されて、和くんはわざとらしく口を尖らせた。
潤君は、楽しそうに笑ってる。
ケータイを買った後、わざわざ「遊びに行くか！」って言って
潤君の家に来たのは、多分連絡先を交換するためなんだろうから、
和くんはほんとに、小芝居したいだけ。
「俺の心配しなくたって、
Aちゃんは学校で男の子といっぱいメアド交換しちゃうもんね？」
「あ、大丈夫コイツ友達いないから」
和くんがわたしを親指で指差し。
ちょっと前まで友達いないこと心配してたくせに！
「Aちゃん、友達いないの？」
「相葉君と風間君がいるもん。あと由里子」
「やべーじゃん、和！男が2人もいるぞっ！？」
結局、わたしのケータイを操作してアドレスを登録してくれたのは潤君で、
智子ちゃんのも入れといてくれたって。
それが済むと潤君は、わたしの頭をまたポンと撫でてソファをおりて、
台所にいる智子ちゃんの方へ向かっていく。
「べつに……中坊なんて眼中にないっす」
「和の眼中は関係ないだろ」
そう言って潤君が笑った。
台所で、お茶の仕度をする潤君と智子ちゃん。
ダイニングにあるテーブルに頬杖をついて、猫背で椅子に座る和くん。
リビングのソファにいる、わたし。
潤君の家は、早々に他界した両親が遺してくれた家を
智子ちゃんと、智子ちゃんの両親が同居する事を考えて、簡単なリフォームがされてる。
新しくて広い台所の前に立っている2人を見ていると
うん、新婚さん、て感じが出てて、何だかドキドキしちゃう。
「もう和んとこ、行って来な？」
「んふふ、いいよ、やらせてよ」
そう言って笑い合う2人からは、幸せの空気が溢れてる。
それと対極に見えるのか……
ダイニングに1人ポツンと……取り残されたように見える和くんは、
なんだか面白くなさそうにも見える。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年10月7日 0時
