107話 変な話し、でしょ？ ページ20
・
風間くんが、同じクラスの男の子の誰よりも
大人びて見えたその理由が垣間見えたその瞬間、
なぜかわたしの心はきゅっとして、
切ないような、ときめきのような……不思議な気持ちが沸いた。
さっきの、
似たような空気だったり、共感めいたものが
明確にわかった気がするからなのか……
「ごめんね、変な話ししちゃった」
「ううん。全然、変だと思ってないよ」
「……うん。Aちゃんはそう思ってくれるような気がした」
また少し、静かになって……
辺りの騒がしい音が、じんじん耳に響いてくる。
わたしは体育座りの身体を解いて、くるっと身体を回転させると、
風間くんの隣に、あおむけになって寝転んだ。
風間くんが、少しだけ頭を傾けてこっちを見つめる視線を
何となく横目に感じながら、青い空を見上げる。
「あたしだってね、好きな人、いるから」
「うん……」
さっきよりもずっと、うん、と頷く風間くんの声がよく響く。
「育ての親が、本気で好きって……さ……」
口に出して言ったら、
それだけで、涙が滲んできた。
「……好きなの……誰にも、取られたく、なくて……」
「うん……そうだね……」
あちこちから聞こえる
誰かの笑い声。
どこを見ても目に映る、
楽しそうな人たち。
「……変な話しでしょ？」
「……ううん。全然、変だと思ってないよ」
風間くんの声が、よく響く。
涙は、溢れて止まらなくなっていた。
ガサゴソ動いた風間くんは、わたしの顔の上に
タオルを置いてくれた……
・
初めて口に出して、
誰かに伝えたこの言葉が、
自分が思っている以上に重く大きく膨らんでいるんだと知って、
胸が痛くて堪らなかった。
ほんとはね、
智子ちゃんだって、雅子さんだって、
由里子だって、会社に居るであろう見知らぬ女性にだって……
いつも、いっつも……
「取らないで」って気持ちを
抱えていて……
「苦しいね」
泣き続けるわたしの耳に、
風間くんのそんな声が届いて、
返事は出来なかったけど、
“ほんとにね”
そんな言葉を心の中で呟いて、
また、
ぐるりと一周して由里子と相葉くんが戻ってくるまで、
わたしは泣き続けていた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1262人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年10月7日 0時
