08話 和くんの年齢 ページ9
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side潤
「親父。あの人って、誰？」
「んあ？どの人だ？」
大広間に長く伸びたテーブルにつく人達は
殆ど全員が知らない人。
いや、知ってても口を利いた事がない。
親戚なんてそんなもん。
それに俺は、9年ぶりにここへ来たから。
そんで、
俺が尋ねたい人、ってのは
「あれ」
「和也さんか？」
今日、玄関先で
俺を見るなりジジィみたいなことを喋って、
今は、上座を陣取って老人達と
チビチビ酒を飲みながら、ケラケラ笑っている、アイツ。
「あの人、いくつなの？」
「とし？おーい和也さーん！」
父が、遠くからそう呼ぶと
和也と呼ばれたアイツがふいっとこっちを向く。
「あーん」
「おまえ今、いくつだ？」
「俺ぇ？Aが今7歳だから……22」
てことは、俺とタメ……と思った途端、
「「「ほおおぉぉぉぉぉ〜」」」
って、
何人かの大人達が、
目を見張って動きを止める。
え、そんな驚くことなの。
「和也さん、22歳ですかー！」
「いやぁ〜若いわぁ〜羨ましい！(笑)」
「成人式には行ってきたんかー？」
さっきの何人かの大人達が、
今度は一斉にワッと声をあげて笑う。
そんなにウケるとこ？
話しを理解出来ないのは俺を初め、
嫁いで来た立場のお姉さま方達、か。
ひとしきり笑いが起きた後、あっという間にそれはほどけて
大人たちはまた元通りに、それぞれの輪の中に戻っていく。
「……俺とタメだろ、アイツ」
「そういうことになるなぁ」
呑気な声をあげてビールを空ける父。
もう一本ちょうだーいと声をあげれば、
どこからともなく、新しい缶が父の前に運ばれる。
「俺、ここに来んのは久しぶりだけど、でも、
さすがに9年前のこと覚えてるよ」
ビールに口をつけながら「んー？」と適当な返事をする父。
聞いているのかいないのか、
でももう、どっちでもよくて、
独り言を呟くように、
俺は9年前のここの情景を思い出しながら、声を出す。
「あの時、アイツはいなかった。俺アイツに会ったこと、一度もない……」
聞いているのかいないのか、
缶から口が離れた父は「うぃ〜」と唸ってから、
テーブルに並べられたご馳走の1つに、手を伸ばした。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
