05話 80年来の友 ページ6
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幼い時のわたしの遊び相手はもっぱら父と智子ちゃんだったけど
この町のじじばば、みんなに育ててもらっていた事も自覚してる。
向かいの家の原田のじいちゃんが縁側で茶をしばく目の前の庭で
原田のばあちゃんが梅を干すのを手伝っている時の事。
「ばぁちゃん、こっちこんな感じ？」
「そうそう、Aちゃん上手よ〜」
褒められて、嬉しくなったわたしがニタニタ笑っていたら
原田のじいちゃが、
「けっ」
っと、不機嫌な声をあげるから
わたしとばぁちゃんで、じぃちゃんを見た。
そしたら杖に両手を置いて、
大股開いて縁側に腰掛けるじぃが
不機嫌な顔をあっちの方へ向けて、
「昔はなぁ、Aだってなぁ……」って
ぶつぶつ文句を言うみたいに、喋りだそうとして、
「美味い梅干し漬けてなぁ……」
「ほら、余計な事は言わなくていいのっ！」
ばぁに、ぴしゃりと言われて口をつぐんだ。
それでも、
じぃがまた「けっ」って言って、
それからわたしを見て話し出す。
「和也もなぁ、全く辛抱しとると思う……」
「ちょっと、じいちゃん！」
ばぁが、梅を干す手を止めてじいを諌めた、けど
じぃは負けじと声を張り上げて
「Aもなぁ、なんも覚えとらんのか？」って
怒ったような声で、わたしに向かってそう言った。
「……なにを、」
「おいこら、ジジィ」
何が何だか分からなくて、
おろおろしていたわたしの後ろで
聞きなれた人の声が響く。
「余計な事口走ると、早めにあの世のお迎え呼ぶよ？」
じぃがまた「けっ」って不機嫌な声で
どっから沸いたんじゃい気色悪い！と
和くんに向かって叫んだ。
「Aをいじめるクソジジィを探知して沸くんですよ」
「昔からお前はそうだ……全く気色が悪い……」
「今も昔もアンタはすぐAにいらぬちょっかいを出すから」
「ばぁの前で言うんじゃない馬鹿者！」
「あら、今更ですよおじいさん」
ばぁと、和くんが笑った。
わたしだけ、おいてけぼりを食らったみたいに
話しの意味も理解できず、
きょとんとして、その光景を眺めるばかり。
じぃと、和くんが言う「昔」が
どれほど昔の話しなのかというと
じぃが言う事を鵜呑みにするのなら、
恐らく、80年くらい前の事なんじゃないだろうか。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
