35話 呼び方 ページ36
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side和
「俺ですか？俺はまぁ、兄ではないですが……保護者ですね」
「あぁー……そうなんですか」
面倒くさい事を突っ込まれないためにも「父親」だと言い切ればいいものを、
そう……言う事にためらいを感じる俺は、本当に小さい男だと思う。
だけど俺のそういう葛藤を知る由もない雅子さんは、
勝手に何か深い事情をし察したのか、それ以上言及してくる事はない。
「いやなんか、二宮さん、すごく若くて浮いてるから」
「浮いてる？」
「浮いてますよー！かなり視線注がれてますよ？」
それには確かに気付いていたけど。
周りを見渡せば本物の「父親」達が明らかに自分とは
見た目も年齢もかけ離れている事だって、自覚してる。
だって俺、えっとAが今12歳だから27歳なわけで、
てことは15歳で産まれてきた子供って事だもん。
今の時代で考えたら、明らかにおかしいよね、本当だったら。
「まぁ、見たい人は勝手に見てください」
「うはは♪そうですね、見るだけならタダですね♪」
「そっかぁ、あんまり見てくる人からはお金取る？」
「あはは！やめて下さいよー、本当に払う人出てきますってー」
自分の膝をパシパシ叩いて笑う雅子さんは急に「は！」と目を見開くと、
「わたし、お金払わなきゃダメですかねぇ！？」って、
真剣な顔で俺を見つめてきた。
「ぷっ……くははっ、何言ってんの雅子さん。払わないで？」
本当に面白い人だなぁと思って、拳を口に当てて笑ったら、
雅子さんは少しはにかんで、いやだーもう、って、俺の肩を叩く。
「雅子さん、だって。男性に名前で呼ばれたの久しぶりだわ」
「え？だって雅子さんの息子も相葉、でしょ？呼ぶ時に困るでしょ？」
俺がそう言うと、雅子さんはまた「は！」と目を見開いて
「なるほどそうか！」って、拳を掌に打ち付けた。
「その理屈でいくと、わたしも二宮さんのこと、和也さんて、呼んでもいいの？」
和也、さん。
それこそ俺も女性から、和也さんだなんて呼ばれるのは……
A以来……ないんじゃないかな……
「……俺と娘は苗字が違うから、二宮、のままで大丈夫ですよ」
それはそれで、冷たい言い方になったと思う。
それでも俺は他の誰かから、
和也さん、と呼ばれるのは……
まだ少し、嫌かもしれない。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
