34話 雅子さん ページ35
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side和
Aが正面玄関から入って、姿を消すまでその後姿を見送って、
俺は俺で体育館を目指した。
あのスーツの店の若造が
「少し髪も爽やかに切り揃えられたら、もっと素敵に」なんて
余計な事を言うもんだから、
真に受けたAに半ば強引に美容室に連れて行かれて、
伸ばし放題だった髪を、短く切られた。
んでまた美容室の若造も「ワックス使って仕上げると、もっと素敵に」なんて
余計な事を言うもんだからそれも買わされて、
今朝はわざわざ髪の毛にそのワックスなんか塗って、
美容室でやられた頭を再現してやった。
そしたらAが眉尻を下げてうっとりしながら
「かずくん、カッコいい……！」なんて言うから、
まぁそれはそれで良しとするんだけど。
体育館の中は保護者席も場所が決まっていて、
クラスごとに間隔が空いている。
早く来た順に前のほうを陣取っている保護者とは対照的に、
俺は一番後ろの席に腰を落ち着けた。
……中学生、ねぇ。
大きくなったもんだね、A。
感慨深い、とは少し違う、だけどどんな言葉も絞り出せなくて
はぁっとひとつ息を吐いて、背もたれに深く腰を預けると、
「こんなに後ろの席ですか？」って、
聞き覚えのある女性の声が聞こえて、
そしてその女性は俺の隣の席に、腰を落とした。
「あぁ、さっきの」
「どうも。2組なんですね？ウチと一緒だ」
そう言ってその女性は、ふひひ、と笑う。
「お名前お伺いしてもいいですか？」
「あ、二宮和也です。今後もよろしくお願いします」
「わたし、相葉雅子です。こちらこそよろしくお願いします」
ぺこぺこと頭を下げて、そして顔を見合わせて笑った。
「わたし、息子の中学に合わせて地元離れたんで、知り合いいなくて……」
「あ、俺もです。ちょっと前までド田舎に住んでたんで知り合いいないし、
都会の人波に酔いそうですよ」
雅子さんは、ケラケラと楽しそうに笑う。
よく笑う女性だ、この人。
「失礼ですけど二宮さん……さっき一緒にいたお嬢さんの……お兄さん？」
頬に手を添えて、雅子さんは首を傾げた。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
