23話 独り占め ページ24
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「どうして突然、東京行く気になったの？」
和くんはわたしの知らないところで、
もうずいぶん前からそうするつもりで準備を進めていたようで
小6の春、東京へ行くと告げられた数日後には
荷物と共に東京へ到着していて
部屋ももちろん決まっていたし、通う中学も決まっていて、
手配は当たり前に済んでいて、
わたし達が住む部屋に到着したのを見計らったかのように
業者の人が沢山の家具を部屋へ運び込みに来た。
「どうしてって……お前、あんな何もない田舎にずっといたい？」
「え……んー……考えた事もなかった」
「マジ？クソ呑気だな。だったらずっといりゃ良かったか？」
「智子ちゃんと離れなくて済んだし？」
ちょっと、嫌味っぽくそう言ったら、和くんは意外にも嬉しそうな顔をして
「ヤキモチ？」って聞いてくる。
「ヤダ……Aがヤキモチ妬いてる……♡」
「違うよっ！！和くんが智子ちゃんと離れたくなかったでしょ？って、」
「全然？それに智子なら、潤と結婚するよ、そのうち」
「へっ？」
何の気なしにぽんと飛び出た言葉に面食らった。
和くんは平気な顔して荷解きをしているけど、
潤と、結婚て……
「そんなの、知らない……」
「そりゃ言ってなかったし」
「……いいの？和くん」
心配しているように見せかけて、
わたしの心臓はドクドクと激しく脈打って、
そりゃぁもう、心躍るとは、このことかと。
そう思うくらい、嬉しくて仕方ない、って感情が
わたしの身体中を駆け巡った。
くすぐったくて、足踏みしそうになるほど。
和くんはわたしの言葉を聞いて、顔ごとこっちへ向くと
ニッコリと可愛らしく笑って見せた。
「全然いいけど？だって俺と結婚してくれるんだもんね？A♡」
「……うん、するよ！」
わたしは思い切り父に飛びついた。
中学に上がる娘の発言とは思えないって、今なら分かる。
それでもこんな事が平気で言えたのは、
わたしがまだあまりにも子供過ぎたから。
子供もいないド田舎で大人に囲まれて育ったのに、
いや、そのせいなのか、
わたしの頭の中は、驚くほど子供だった。
子供のはずなのに、なんでだろう、
なんだろう、この
“独り占めにできた”と思って高揚する感じは。
わたしは今までずっと、
智子ちゃんに……嫉妬してた？
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
