父と、結婚指輪と、私。【N.K】 (ページ22)

今日:18 hit、昨日:4 hit、合計:301,835 hit

21話　一生、一緒にいるためにページ22

・

side和

一生一緒にいるためには、どうしたらいいか？

言葉が通じないほど子供なAを

受け入れるのが困難で

Aが俺のことをすっかり忘れて、

キラキラな子供の目を向けてきた時は絶望した。

会話が成り立つようになって、絶望感はさらに加速。

当たり前に俺は、Aと死ぬまで一緒にいられるものだと思っていたから、

もしかしたらこれは、覚悟しなきゃいけないのかもしれないと、

Aが誰か、別の男と……

新しい人生を生きるのを、見届けなきゃいけない日が来るのかもしれないと……

そう思ったら、

Aと離れて生きるほうが、よっぽどいいんじゃないかと

そう思ったこともあった。

まるで赤の他人のように、何食わぬ顔をして、

偶然を装って再会する方が、

よっぽどいいんじゃないかって。

だけどそう思う頃には、もう時間が経ちすぎていて

俺を、かずくんと呼んで慕うAを、

もうどこにも遠くへやることなんて出来なくて、

結局俺も、離れたくなくて。

それに離れるのはやっぱり危ないんだ。

俺になんか見向きもしない可能性だってあるんだから。

俺はもしかしたらと、ふと思い出すかもしれない可能性を待つのをやめて、

Aの親として、Aの第二の人生を、

見届ける覚悟をしようと決めた。

そう決めたのは、この子が4つの時だ。

だけど、Aの成長は時に恐ろしい。

俺の決意をあっという間に揺るがす。

時折俺に見せる、嫉妬のような表情。

それを子供のものととるか、別のものととるか

本気で悩んだことが何度もある。

一生一緒にいるためには、どうしたらいいか？

とりあえず、来たる大学受験に備えて、

中学に上がる前から、一緒にこの田舎を離れよう。

大学に行くから都会へ出ると言う子供に

じゃぁ一緒に行くと着いていく親はきっといないから、

だったらまだ保護者の監督が必要な今のうちに

一緒に都会へ出てしまえば、

目の届くところに置いておけるでしょ？

大人になったとしても。

その事を智子に伝えたら、

そうした方がいいと笑顔で言われた。

……智子にも、きっと辛い思いをさせたと思う。

・