19話 植木鉢の花 ページ20
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side和
それは年末の、
冬休み中の出来事だった。
「………あぁ……、うあっ………あぁぁ………」
まどろみの中、微かに聞こえてきたのは、
Aの、泣く声……
一気に目が覚めて、慌てて飛び起きる。
いつもだったら俺より先に起きて「かずくん、起きる時間だよ」って
俺を揺り動かすAがどこにもいなくて、
泣き声のする方へ走った。
「Aッッ！！」
襖を開けて居間へ入ると、
その奥の縁側に腰を落として、うな垂れて泣く後姿を見つけて
「何があったっ！？A！！」
急いでAの傍へ寄って、その肩を掴み、
身体をこちらへ向かせた。
「ひっ……うぐっ……うううっ……！」
ぐしゃぐしゃの顔に、パジャマ姿のAの胸元には、
小ぶりの、植木鉢。
その鉢の中の苗は、成長を止め、
完全に枯れ果ててしまっていたのが分かった。―――
―――終業式の日、いつものように学校へ迎えに行くと、
「かずくん！見てみて！」ってニコニコしながら、
俺にもよく見えるよう、高々と持ち上げて見せてくれたのは
芽が出た植物の植木鉢。
学校で種を蒔いて育てていると、家でも話してくれていたもので
「こんなに大きくなったんだね。すごいじゃない」
「うん！」
いやに嬉しそうに、大事そうに、
服が汚れるのも構わず抱えて帰ってきたのは、ついこの間のことだった。
大切にしすぎて水をあげすぎたせいのか、ずっと眺めていたいからと
暖かい部屋の中に入れていたせいなのか、
家に持ち帰ってきてからの鉢の中の植物は、
みるみる元気をなくしていき、
昨日、「お花が死んじゃう」と言ったAと一緒に、
植物が元気になる薬を買いに行って、
それを植物に、与えてやったはずなのに。
「……枯れちゃったんだね？」
「うっ……あぅっ、うぅっ……うわぁぁん！」
堰を切ったように、
わぁんと大声を上げて、
Aは鉢を抱いたまま、涙をボロボロと零した。
その涙が、鉢の中の土の上にポタポタと落ちて、染みていく……
だけど芽がまた元の姿を取り戻す事は、
当たり前だけど、なくて……
俺はただただ、泣きじゃくるAを、
鉢ごと抱きしめてやる事しか、出来なかった。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
