13話 わしが死んだら ページ14
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side和
「和也！服が濡れたぞ馬鹿者！」
「夏なんだからほっときゃ乾くだろ」
「年寄りをバカにするんじゃない。あっという間に風邪を引くぞ」
「ぶはははは！んでそのままあの世に逝く？」
「なっ……」
俺がこんな事を言うのもなんだけど
ジジィという生き物はあまり冗談が通じない。
「なんちゅー事を言うんだお前は！！」
「じょーうだんですよ、じょ・う・だ・ん！」
「ったく……最近の若者みたいになりおってからに……」
「それ褒め言葉じゃん？」
「生意気に……いや、生意気なのは昔からだったな」
「その通り」
ジジィがいつもの「けっ」って声を出すから
おかしくって、笑った。
「だいたいなぁ、減らず口を叩くのもいいが、お前わしが死んだら泣くだろう」
「ぶふっ、何よいきなり」
むすっとした顔をしてそんな事を言い出すから、
俺はまたおかしくなって笑う。
「わしが死んだら泣くだろう」
「うん、泣くよ」
真面目な顔して二度も同じ事を聞いてくるもんだから
俺も真面目に本当のことを答えたのに、
ジジィは突然、驚きの顔で俺を見た。
自分で聞いといて何でそんな顔すんの？
「泣くよ。絶対に」
「……わしはお前のそういう所が嫌いじゃ……」
「そりゃどうも？ありがとう」
ジジィは、そっぽを向く。
友を亡くせば、涙は出るさ。
しかも、
最愛にして最高の友を亡くせば、
止まれと願ったって、
きっと涙は止まってはくれないよ。
「……ここまで年をとると、もう人を見送るばかりで、」
「そろそろ自分が逝くんじゃん？」
「……」
「じょーうだんだって」
「お前は、平気か？」
「は？」
また怒り出すのかと思いきや
急に弱弱しい声で、平気か？なんて訊ねてくるジジィ。
「なにが？」
「1人取り残されるんじゃないか？」
「バカ言わないでよ。Aがいるでしょ？」
ジジィはまた、そっぽを向いた。
うん、分かってる。
俺はいつか、独りになる。
Aが、何も思い出さない限り。
「泣くよ、俺。お前が死んだら」
「残念ながら、いつかは死ぬ」
「それ言ったら俺だってそうでしょ」
生暖かい夏の風が、ジジィの少ない髪の毛を撫でて
その後、俺のふっさふさの髪を撫でる。
この3年後、ジジィは95歳で、あの世へ逝った。
そのまた2年後には、ばぁも。
もちろん俺は、泣いたさ。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年5月8日 2時
