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翔「あぁー･･････俺そろそろ行かなくちゃ。」
30分くらいだろうか、会話は途切れることなく続きあっという間に時間が過ぎた。
腕時計を眺めながら俺がそう言うと、Aさんが「えっ」と短く声を上げる。
A「お仕事、忙しいんだね。」
Aさんはまた眉をへの字にして、心配そうな顔をしてくれた。
翔「うん、でも楽しいよ。」
俺がメガネを掛けながらそう言うと
「それなら良かった」と言うような顔をして、彼女はふんわりと微笑んだ。
A「またね。」
そう言って笑う彼女。
いとも簡単に別れを告げる彼女に、また俺は寂しさを感じていた。
彼女の中の俺って、一体どんな存在なんだろう？
そもそも彼女の中に、俺は存在しているんだろうか？
よくよく考えれば、まだ二度しか会ったことのない相手。
印象に残らなくても、心の中に残らなくても、さして不思議なことではない。
ただあまりにも、俺は彼女のことを考えすぎていて、
事あるごとに思い出しては焦がれていたせいで、
彼女の中に俺はいないのかと思ったら、寂しくて……
思わず彼女の前に、手を差し出していた。
A「えっ？」
不思議そうな顔をして、差し出された手を彼女は凝視した。
そしてすぐに顔をあげ、俺のほうを見た。
「これは何？」とでも言いたげな表情で。
確かに･･････
俺は何て言ったらいいのか分からず、
とりあえず「握手。」とだけ言った。
もっとリアクションしてくれると思っていた。
たいていの人だったら笑顔で握手をする。
大体自分から求めてくる人が大半だ。
喜んで握手に応じてくれるかと思っていたのに、彼女は意外な言葉を放った。
A「なんか、芸能人、って感じですね。」
……その言葉に、はっとした。
差し出した手を引っ込めようとする前に、彼女が両手で包み込むようにして俺の手をとった。
A「お仕事頑張って下さいね。応援してます。」
彼女はそう言って、ニッコリ笑った。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年2月23日 17時
