温かい家～sweet home～【S.S】 (ページ4)

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辰「あ、そうそうこの後だけど、」

翔「んあ？」

しばらく車を走らせた辰実が、車の中央にあるモニターの

電話ボタンを押す。

辰「飯、食ってくだろ？行きたい所があるんだけど、いい？」

翔「あぁ、いいよ。」

モニターに映し出される文字。「A」

……面白い名前の店だなぁ、なんて呑気になってたら

聞こえてくる声。

『もしもし？なぁに？』

「あのさぁ、今から飯食いに行ってもいい？」

『急だなぁー、別にいいけど。じゃぁお鍋にしよーっと。』

「友達も１人連れてくわ。」

『ほんと？珍しいね。わかったー。』

「んじゃ、１時間で着く。」

『はーい。』

電話が切れた。

ちょっと待って。

翔「今のなに？お前の彼女の家かよ！」

辰「彼女じゃないし。友達だし。」

翔「照れなくていいから正直に言え！今の雰囲気どう考えても、」

辰「だって本当にただの友達だし。」

翔「あっそ！そうだったとして！俺ヤダなぁ～あんたら２人に挟まれるの～！」

辰「Aのほかにもいるよ？由希とか。」

翔「いや誰っ。」

辰「Aの娘。」

……はぁ、なるほど。

家族か。そうか。核家族か、もしくは大家族、うんうんなるほど。

翔「って、それもどうなの？」

辰「ん？」

翔「俺アウェイ過ぎるじゃん。誰なの俺。」

辰「え、誰？」

翔「櫻井です！櫻井翔です！」

辰「そうでしょ。俺の友達でしょ。」

翔「……あぁ、」

辰「友達に友達紹介するだけだよ。」

翔「まぁ……うん。」

電話の女性の声に、過敏に反応してしまったのは

さっきのゲレンデの女の子達の声が、言葉が、

頭の中を駆け巡ったから。リフレインですよ。リフレインが叫んでる。

どうしてどうして～♪ですよ。

だけど、俺は辰実に友達を紹介された事はなかったし、

辰実がどんな友達と付き合ってるのかも知らない。

多分、辰実は……俺に気を遣って、俺には友達を紹介しない。

いつも会う時は２人だ。

もしも辰実が誰かといる時に、俺が「いまヒマ？」と連絡を入れれば

辰実は「大丈夫だよ。」と言って、その誰かを人払いする。

辰実はそういう奴。

それは辰実が、ほかの誰かよりも俺を優先してくれるからじゃなくて、

滅多にヒマが出来ない俺が誘ってきたという俺の行為を

無駄にしないための、辰実の優しさだ。

そんな辰実が紹介するというのだから

恐らく俺にとって、さっきみたいな害……

さっきみたいな面倒な相手ではない事は確かだ。