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翔「行きたい！」
ビビらすつもりでデカイ声を出したのに
辰実は無反応のまま、デスクに座ってパソコンを弄っている。
くっそ、こうなると俺がただのアホじゃねぇか……
だがめげない！！
翔「たつくーん、元気？Aさん。」
こうなったら素直攻撃。
どうだ、反応しろ。
辰実の職業はいまいちよく分からない。
おそらくはプログラマなんだと思うけど、詳しく聞いたことはくて、
だいたい家にいて、パソコンデスクの前に座っている。
だいたい家にいるから、俺の急な訪問にも対応してくれて
俺は辰実の家で飲むことが増えた。
辰「アイツ、引っ越すことになった。」
翔「えぇっ！？」
だらだらとテーブルに預けていた身体が、勢いよく起きあがる。
翔「･･････なんで？あの家は？」
辰「旦那の妹が住むことになった。」
翔「･･････なんで？あそこは彼女の家なんじゃないの？」
辰「そうだけど。まぁ、所詮嫁いできたよそ者だからね、向こうの人たちにとっては。」
よそもの･･････
あの時のあの暖かい家には、いつかは行けると思ってたから
彼女の話を自分から辰実にふったのは、今日が初めてだった。
翔「仲良くなかったの？向こうのご両親とは。」
辰「旦那の両親？仲は悪くなかったと思うよ。ただ、その妹がクセのある人で。」
辰実が言うには、遠まわしに
「兄が死んだのは貴女のせいだ」とか
「その後ものうのうとあの家に住み続けるなんて図々しい」とか
「そもそも財産目的だったんだ」とか
色々言われ続けてきたらしい。
結局向こうの両親も彼女の事を嫌いではなったが、
死んだ息子の嫁よりも、自分の娘の方が可愛いのは当たり前で
「貴女のためでもある」とか
「もう旦那もいないのに、ここに縛られ続ける必要はない」とか
「自由になっていいのよ」とか
色々言われ続け、結局あの家を手放す道を選んだとのことだった。
翔「え、じゃぁAさんはこれからどうするの？」
辰「こっちに来るよ。」
翔「えっ！？こ、こっちって……
･･････都内に？」
辰「都内に。」
俺は心底、自分が嫌になった。
俺から見たら充分悲しい状況に身を置いている彼女。
なのに
彼女がすぐそばに来るのかと思ったら
心が躍った。
素直に、嬉しい、って
思ってしまった……
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2015年2月23日 17時
