温かい家～sweet home～【S.S】 (ページ20)

今日:27 hit、昨日:1 hit、合計:206,076 hit

03 ページ20

〈辰実side〉

A「わたし結婚することになったー♪」

Aからそれを聞いた時、心底嬉しかった。

もう今までのような付き合い方は出来ないだろうと思ったけど、

俺は本当に大事な人間を、

自分の手で大事にしようなんてこれっぽっちも思わない人間だから。

誰かのそばで、幸せになってくれたらそれでいいって。

それが一番、嬉しかった。

Aの旦那とは面識がなかったので、Aと接触する機会は極端に減った。

知らぬ男と一緒にいたりする嫁を、よく思うやつなんかいないだろうと思ったから。

共通の知人だったら違っていたんだろうけど。

それでもAとはSNSでの繋がりがあって、彼女の近況はよく分かったし

お互いSNS内で会話をすることもあった。

Aが結婚して2年が経った時、由希が産まれた。

それから3年が経って、相変わらずの生活を送っていたある日、

Aが突然、SNSから姿を消していることに気付いた。

周りの知人もその理由は知らないと言う。

それに加えて携帯の電話番号も、

メールのアドレスも変わってしまったのか、

一切連絡がつかない状態になった。

さすがに何か変じゃないか？と思った時、俺は彼女の新居へ出向いていた。

毎年彼女からは年賀状が届いていたので、

そこに書いてある住所を頼りにAの家へ向かった。

連絡をとる術もないので、当然いきなりの訪問になる。

インターホンを押すと、Aが出てくる。

俺はその時の彼女を見て驚いた。

少しふくよかな印象のあった彼女が、見るからにやつれていたから。

A「あ、たつくんだ･････ひさしぶり。」

辰「どうしたんだよお前？すごい顔してるぞ。」

Aは「ふふふ」と笑うだけ。

辰「･･････家に誰もいないの？旦那は？」

そう尋ねるとAは「とりあえず上がる？」と言ってスリッパを出す。

初めて訪れた家の廊下を進んで、

通された客間へ入ると、そこには

若い男の写真が飾られた、仏壇があった。