温かい家～sweet home～【S.S】 (ページ15)

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〈Aside〉

苦笑いをした彼は前に向き直ると、

ボスっと音を立ててソファに深く腰掛けた。

しばらくの間、

洗い物をしながら、チラチラと翔さんの後頭部を眺めてたら、

彼の後頭部は次第にズルズルと横にずれていって、

ついには見えなくなった。

様子を見に行くと、彼は規則正しい寝息を立てていて

直前まで弄っていたのか、ソファからずれ落ちた手にはスマホが握られている。

彼にそっとブランケットを掛けると、もぞもぞと動き出すから

起こしてしまったかと思って後ずさったけど、

彼は自分に掛けられたブランケットを手繰り寄せて、

また規則正しい寝息を立て始めた。

なんて暖かいんだろう。

暖色系のライトにぼんやり照らし出される彼を見てそう思った。

優しい瞳

紳士的な振る舞い

だけどお茶目さも兼ね備えた彼が

魅力的でないはずがなかった。

何度も遊びに来てくれるたつくんには感じた事のない何かが

自分の中でゆっくりと湧き上がってくるような錯覚を覚えたけど

A「そりゃ、これだけ素敵だったら、ね。」

誰に聞かせるでもないのに声に出してそう言って

わたしはまた台所へと戻って後片付けを再開した。

・

脱衣所からたつくんと由希の声がして

２人がお風呂から出たことが分かったから、

私は脱衣所の戸を叩いて「おふたりさーん。」と声を掛けると

2人は声を揃えて返事をする。

と同時に脱衣所の戸が開きそうになり、私は慌てて止めた。

A「由希っ!?ちょ、待って！たつくんパンツ履いた!!?」

辰「履いてない。」

A「由希が開けようとするー！早く履いて！」

戸の向こうで由希が「何でダメなのー？」と声をあげるので

A「ヤダよー！たつくんのぶらぶらしたのなんか見たくないもん。」

と答えると由希が無邪気に

由希「何でー？怖くないよー？」

なんてい言うから、それを聞いて私はつい爆笑……じゃない、

A「しし静かにー！翔さん寝てるから騒がないでって言いに来たの！」

小声で戸に向かって話しかけると、ガラッと戸が開き

パンツを穿いたたつくんが出てきた。

辰「言ってる人が一番うるさいっていうね。」

と言って

たつくんはわたしの両方のほっぺたを、片手でぶにっと押しつぶした。