正しくなれない【青】

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▷翔太side





何時間くらい経ったかな、いや数分くらいかも。
倉庫の外からも「翔太〜」」「なべ〜」という声も聞こえてくる。




さっきまで、あんなに外に出たくてドアノブをがちゃがちゃやってたのに、今は何もしたくないし、むしろ気付かれたくないと思う。






『渡辺くん、誰か近くにいるかも、！！！』







どんな理由だったとしても、この時間が今の俺にとってめちゃくちゃ幸せだっていうのは分かる。








『一緒に、ここにいてほしい、』






俺の腕を掴んだ小さな手は、震えてて。
俺が守らなきゃ、というか。
防衛本能みたいなものなのかな、そういう気持ちになって。







「Aちゃん、俺もうちょっとだけ、このままでいたい」







もしかしたら手を繋ぐ必要はなかったかもしれない。ただそばに立ってれば十分だったかもしれない。



でも、握り直した手に、俺が絡めた指に、力が込められたから。Aちゃんが握り返してくれたから。





たらればの話だけど、もしかしたら、本当にもしかしたら、





「Aちゃんは、もう見つかりたい？」






もう少しこの時間を一緒に過ごしていたいと、思ってくれているんじゃないかなって。





『……、わたなべくん』

「ん？」








暗闇に目が慣れてきて、Aちゃんの姿がはっきり見える。くりくりした大きな目が、俺をまっすぐ見てる。


あぁ、こんなに近くで見たことなかったな。
今、俺めっちゃどきどきしてる。バレないかな、どうか気付かれませんように。




『…、もうちょっとだけ、』







口元を少しだけ緩ませて、俺の方を見てくれるAちゃん。



「うん」







何かを話すわけじゃない。ただ黙って、横に並んで立つ。
たまにぶつかる腕や肩が熱を持つのが分かる。






ふっかに言われて思った。
俺、Aちゃんのこと好きなのかもって。
でも、先生に恋愛感情ってありえないよな、とか。
どこかで自分の感情を否定し続けていたと思う。






「俺、体育祭頑張る。あのね、俺とTシャツ交換してよ。体育祭用のやつ。」

『え？学級のやつ…？岩本くんたちとしないの？』




違うよ、Aちゃん。体育祭のジンクスがあるの。
それは今は言わないけど。いつか、そのジンクスを知ってもらえますように。





佐久間「なべいたーーーー！！！！！」

「おせぇよ！俺めっちゃ待ってた！！」





そして、いつか、俺の一目惚れがAちゃんだよって伝えられますように。

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