13 ページ16
『………………』
ここにいるかもわからないけれど、でもなんとなく、ここにいる気がした。
『…ひさしぶりだね、らぁくん。…、わたし、今日、らぁくんに逢いにきてたの。結婚、しなきゃいけなくなっちゃったから。相手は全然知らない人で、話したことだってなくて、好きになんて、なれそうになかった、から。そんな人と結婚して、わたしの人生は縛られたまま、自由になんてなれないんだろうな、って思ったら、もういいや、って思って。だから、もう、遠いところへ、あの世へでも逝こうかと、おもったんだけどね、…………』
『わたしは、らぁくんのことが忘れられなくって。だから、最期にらぁくんに逢いに行こうと思って、仕事帰りにふらっとここへ寄ったの。』
『そしたら、呪いとか言われるし、何してたかも思い出せなくなっちゃうし、らぁくんは可笑しいしで、…。』
『…………また、またらぁくんのこと、助けてあげられなかった。わたしは救えなかった。ほんとに、ほんとにごめんなさい、………わたしのこと、忘れてるかなって、思ったけど、…覚えててくれて、ありがとう。わたしはもう、あっちに逝くつもりだけど。最期に一度でも逢えて、よかった。ほんとうに、いままで、ありがとう。』
『それじゃ、ね。ばいば______「………待って。」………え?』
聞こえないはずの、声が聞こえた。
「…こんなかたちで、もう一度逢えると思わなかったけど、…久しぶり、A。………これ聞こえてんのか?」
『………聞こえてる、聞こえてるよ、らぁくん。』
声が聞こえる。姿は視えないけれど、そこにいる。
「…そっか。…………なんて言えばいいのかわかんないけどさ、もう、今更、遅いかもしれないけど、Aに言いたいこと、言わなきゃいけないこと、あるんだよ。」
『うん…っ、うん、なに、らぁくん、…?』
「俺、おれ、お前に謝りたくて、…高校のとき、酷いこといって、ごめん。あのときのおれ、ほんと、どうかしてたんだ。…親にぶたれて、もうなんか、全部、どうでもいいやってなっちゃって。お前に、ほんとに酷いこと言った。……嬉しかった。お前が心配してくれて、嬉しかった。“信じて”って言ってくれて、ほんとに嬉しかったんだよ。でも酷いこと、言っちまった。…………ごめん。」
『…らぁくんは、謝らなくていいの。らぁくんを助けられなかったのは、わたしだから…っ』
「そうじゃない、そういうことじゃないんだよ…ッ」
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
てぃー(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!!!これは何度でも言わせていただくんですがこれはそのうちリメイクするので、そこで(できれば)刑事にも救いを……と思っております。ふたりの行く末を何度も見返してもらえて本当に嬉しいです。ありがとうございました!! (3月10日 15時) (レス) id: c618f910d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 完結おめでとうございます!!!もう猿山君と夢主ちゃんが幸せそうで嬉しいです。天野刑事の気持ちを考えると凄く辛かっただろうから天野刑事にも幸せになってほしい!!また見返しにきます。その前にもう一度読み返そ...(3回目) (3月10日 12時) (レス) id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
えびてぃー(プロフ) - 葵斗さん» 返信遅くなって大変申し訳ありません、ほんとに嬉しいコメントありがとうございます!あまりに拙く、詰めの甘い話ですが、そこまで暖かい評価をいただけて本当に嬉しいです。この作品はそのうちリメイクするので本当にモチベ上がりますご愛読ありがとうございました! (2月28日 12時) (レス) id: c618f910d2 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - えびてぃーさんの執筆は終わってしまいましたが、これからもふとした時に読ませていただきたく存じます。(^ら^) (2月26日 19時) (レス) id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - 完走おめでとうございます!この作品を執筆中に読めなかった事を本気で悔やむレベルの素敵な作品でした。猿山君のことが大好きで、いつも猿山君に救われていた。そんな夢主ちゃんの猿山に拒絶された時の気持ちが深く伝わってきて思わず泣いてしまいました。 (2月26日 19時) (レス) @page24 id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:てぃー | 作成日時:2024年1月10日 19時