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『……ううん、大丈夫、大丈夫だよ、ぺんちゃん、ッ、……………わたしも、ごめんなさい、手伝うって言ったのに、なんにも、何もできなかった…っ、謝らなきゃいけないのはわたしなの、ごめんなさい…っ』
「…………ほんとに、ごめんな、辛いよな、でも、もう、どうにもできないみたいなんだ、もう、もう帰ろう、A。…俺の家寄ってご飯たべよ、今日はもう遅いから泊まっていきな。」
『ありがとう、ぺんちゃん、でもわたし、…ちょっと、行かなきゃいけないところがあるんだ。お家には、また、今度行ってもいい?』
「…うん。いいよ。“約束”な。………じゃあ、おれそろそろ行かなきゃ、だから。弟のご飯用意するから、帰るね。Aも早く帰りなよ、…………………じゃあね。」
『…うん、ばいばい。』
ひと通り話をしてから、ぺんちゃんは保健室のドアを閉めて出ていった。本当に申し訳なかった。わたしがずっと寝ていたせいで、彼に辛い役目をすべて押しつけてしまったのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
けれど、…けれど、わたしにも、行かなきゃいけないことがある。
ベッドから出て、保健室から出て、どんどん歩く。“神社”に向かって、一直線に。どんどん記憶がよみがえってくる。わたしがこの学校に来た理由も、どうして職員室にいたのかも、全てを思い出せる。
この学校に来て職員室にいたのは、らぁくんにもう一度逢うため。
1年前に親に告げられた、知らない人との政略結婚の事実は、わたしを絶望の淵に突き落とした。好きでもない、知らない、ただ親に都合がいいだけの相手との結婚が、嫌で嫌でしょうがなかった。
話を聞かされたときにふと思い浮かんだのが、らぁくんの顔だった。彼も同じように家柄のよい人と政略結婚させられたという話を聞いたのは、3年近く前だったか。あんな決別をしてから、わたしとらぁくんは関わることがなかったけれど、わたしはらぁくんを忘れることはできなかった。
廊下を抜ける。職員室を突っ切って、わたしは神社の前に立った。
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てぃー(プロフ) - 匿名さん» ありがとうございます!!!これは何度でも言わせていただくんですがこれはそのうちリメイクするので、そこで(できれば)刑事にも救いを……と思っております。ふたりの行く末を何度も見返してもらえて本当に嬉しいです。ありがとうございました!! (3月10日 15時) (レス) id: c618f910d2 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 完結おめでとうございます!!!もう猿山君と夢主ちゃんが幸せそうで嬉しいです。天野刑事の気持ちを考えると凄く辛かっただろうから天野刑事にも幸せになってほしい!!また見返しにきます。その前にもう一度読み返そ...(3回目) (3月10日 12時) (レス) id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
えびてぃー(プロフ) - 葵斗さん» 返信遅くなって大変申し訳ありません、ほんとに嬉しいコメントありがとうございます!あまりに拙く、詰めの甘い話ですが、そこまで暖かい評価をいただけて本当に嬉しいです。この作品はそのうちリメイクするので本当にモチベ上がりますご愛読ありがとうございました! (2月28日 12時) (レス) id: c618f910d2 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - えびてぃーさんの執筆は終わってしまいましたが、これからもふとした時に読ませていただきたく存じます。(^ら^) (2月26日 19時) (レス) id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - 完走おめでとうございます!この作品を執筆中に読めなかった事を本気で悔やむレベルの素敵な作品でした。猿山君のことが大好きで、いつも猿山君に救われていた。そんな夢主ちゃんの猿山に拒絶された時の気持ちが深く伝わってきて思わず泣いてしまいました。 (2月26日 19時) (レス) @page24 id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てぃー | 作成日時:2024年1月10日 19時