恋をしたのは王子でした (ページ8)

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・8話ページ8

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それから教室までニノが送ってくれて、ちょっとした騒ぎになった。

ニノは学校では可愛くてかっこいい先輩で有名なんだ。これでも演劇部に所属していて、ほとんどの作品で主演を務めている。所謂エース。

既にいくつかの事務所から声がかかっているのでは、と噂されるほど。

実は智くんも演劇部なんだ、意外でしょ？
とは言っても、ニノが強引に入れたらしいんだけど。

智くんは最初、絵を描きたいから美術部に入ろうとしてたんだって。
でも中学から仲の良いニノが智くんの画力を劇中の背景だったりに利用し、ゴホンっ……生かしてやりたいとのことで、渋る智くんを何とか説得して演劇部に入れたんだって。

これはニノに教えてもらった話だけど、
一度だけ、智くんは主演をやったらしい。

智くんがまだ高校一年生の時かな。
王子役だったらしいんだけど、それがもうかっこよくて、その場にいた女子はみんな目がハートになってたって。

本来なら俺もその劇を観に行く予定だったんだけど、風邪をひいて行けなかった。
その日の俺の落ち込み具合を智くんはまるで灰になったみたいだと言っていた。
後日ニノに聞いて、今でもやっぱり風邪でも無理して行けばよかったと後悔している。

それから智くんは裏方に徹底していて、もともと人前に出るのが好きじゃない人だから主演を断らなかったこと自体奇跡に等しいのに。
あのニノだって智くんの演技を褒めていたんだ。
きっと素晴らしい舞台だったに違いない。

どうして俺は風邪なんてひいてしまったんだ……

後悔先に立たずとはこのことか、今までこんなに風邪を恨んだことはない。

あれから何度かもう一度舞台に立ってくれと言っても、またいつかの一点張り。

そのいつかは、来るのだろうか

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