・18話 ページ18
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「来てたんなら顔だしてあげればよかったのに」
後を追うように体育館を出ればすぐそこにその人は居て、少し大きめの声で話しかける。
「うるせー、裏切り者」
「朝はごめんって、ちょっと面倒くさくて」
「俺はその面倒くさいのを一人で相手してたんですー」
そう言ってぷくぅと頬を膨らまし不貞腐れるニノは年下の俺から見ても可愛らしい。
朝から雅紀に絡まれていたのを無視したのは、
うん、謝るけどさ……
「そんな距離とる？！」
俺が一歩近づくと必ず一歩下がるニノにショックを受けながらまた一歩近づけば、それに比例してニノも一歩下がる。
なんだかそれにムカついて今度は二歩近づけばニノも二歩下がるから次は三歩って、鬼ごっこかよ！！
結果二人で体育館の周りを追いかけっこしていたら普段運動をしないニノが当然疲れてすぐに終わった。
「はぁー、もう歳だわ」
「いやいや、あなたまだ17じゃない」
「………無駄に体力バカだな」
「ん？なに」
「別にー」と言いながらその場にしゃがみこむから俺もその隣に座った。
そうだ、さっき撮った写真見せよう
きっと薄情なニノもあのかっこいいキラキラした雅紀を見れば少しは見直してくれるはず！
そう思ってスマホをいじっていると隣からぬっと腕が伸びてきてスマホを取られた。
あっ、と思ったのも束の間、ニノがいつにもなく真剣な顔で見つめてくるからこっちも何故か緊張する。
何か言おうとした時、それを遮るようにニノが口を開いた。
「翔ちゃん、本気で演劇部のこと考えてみない？」
「………だから俺は、」
「知ってるよ、翔ちゃんが演劇部に入りたくない理由」
「えっ」
うそ、誰にも言ってないのに
あのしつこい雅紀にさえ言ってないのに
何でニノが知ってるの？
そんな考えが顔に出ていたのか「ふふっ」と笑われて少し恥ずかしい。
何で？という思いをのせてニノの顔を見れば、分かってくれたのかスラスラと教えてくれた。
「そんなの見てれば分かりますよ。
どーせ演劇部に入っちゃうと大野さんの演技を真正面から見れないーとかそんな理由でしょ？
まぁ、鈍感な大野さんやあいばかは気づいてないだろうけど」
「そんなって、まぁ否定はしませんけど……」
「それに、」
「大野さんのこと、好きなんでしょ」
と、少し躊躇うように、
でも確信をついたような口調で言われ、
俺は頭が真っ白になった。
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作者名：クマアラシ | 作成日時：2018年4月18日 22時
