・4話 ページ19
side.O
「あ、これ絶対翔ちゃん好きな味だよ」
新しく出てきたやつ、と翔ちゃんへ一口サイズに切ったチーズケーキをフォークに指して差し出す。
あーん、と言いながら食べさせようとすれば恥ずかしそうに頬を染めながらも食べようとする。
まったく、可愛い奴め
"絶対翔ちゃんの好きな味"は本当に無意識に言っている言葉で、しかも本当に美味しいって言うから翔ちゃんと俺の味覚は似てるんだと思う。
前に翔ちゃんは俺に合わせてくれているだけかもしれないと思って、さほど美味しい！って訳でもない普通のマフィンを"翔ちゃんの好きな味"だよと嘘をついて渡したところ、
「う〜ん、まぁ美味しいけど。本当にそう思った？」
と聞かれ確信した。
それと同時に罪悪感も生まれ、嘘をついたことを謝り真意を話せば笑って許してくれた。
それからだ、翔ちゃんの好きな味の前に"絶対"
をつけるようになったのは。
翔ちゃんが食べる寸前ですごい速さで何かが目の前を横切って、それがニノの手だと理解したのはもう俺の右手からヒョイっとフォークを取られた後だった。
「ちょ、なにしてんのっ」
「あー！私のケーキ、」
「なんだよニノ、邪魔すんなよ〜」
「ばっか、何が邪魔すんなだよ」
俺の翔ちゃんにあーんなんかしやがって！と言いながら肩を叩いてくる。
うん、地味に痛い
「全く、油断も隙もあったもんじゃないな」
「何が不満なの？翔ちゃんが食べたいって言うから、あーんしてただけじゃん」
「それだよそれ！俺以外が翔ちゃんにあーんなんて許さん！」
全く独占欲強いんだから、そんなんじゃ翔ちゃんも嫌に………なってないね。
なんなら頬染めて照れてるよ、かぁいいね。
「翔ちゃんごめんね、独占欲鬼級カレシが許してくれないからさ、あーばちゃんに貰って？」
ニノがなんやかんや文句言ってるけど無視して、申し訳なさそうに元から下がり気味の眉をもっと下げて言えば、渋々了解してくれた。
「てかニノのせいで食べれなかったんだから、カレシ様が取りに行けばいーんじゃない？」
「あ、そっか！」
「は、何でそうなる？どうせその間にまた翔ち
ゃんにあーんする気だろ！てか翔ちゃんもそっか、じゃないよ！！騙されてるよ！！」
「これ人気っぽいから早く行かないと無くなるよ？」
「和也早く！」
「おいらのもよろしく〜」
「いや行かないからな！？」
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作者名：クマアラシ | 作成日時：2018年3月6日 21時
