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ヤブの母は、早くに母を亡くしたユウヤにとっても母代わりだった。
ふたりは亡骸を前に誓った。
力をつけ、必ずや父の仇を取る。そして真実を喋らせ、もし父たちの死に責任があるのならその報いを受けてもらう。
この国の王に。
もしかしたら、ヒカルの父親に―――。
「ヒカルくんがなにを考えていたのかオレにはわかんねえよ。本当は何者だったのかも。だがオレたちの邪魔をしたのは確かだ。そんな奴にこれ以上足を引っ張ってもらいたくねぇ。
ヤブくんがヒカルくんを救いに行きたいなら勝手に行けよ。だが林檎は渡さない。オレはひとりでも王に面会する」
ユウヤの強い瞳。
普段へらへらと笑ってばかりいるが、あの日のユウヤの慟哭をヤブだって覚えている。
血を吐くほどの哀しみを。
――だがヒカル……。
ヤブは思う。
お前は何故林檎を燃やそうとした?
思い起こせば確かにお前は、一度も林檎が欲しいとは言わなかった。
林檎はいらないと。
最初から燃やす気だったんだな。いったい何を考えて……
いや、何を考えてるのは分からんのはオレも一緒か。
この期におよんでお前のことが気になってしゃーないなんてな。
わけわかんねぇな。
だけどな。
ああ、だけどな。
ヤブは一度強く首を振り、そしてユウヤの肩を叩いた。
「ユウヤ。もちろんオレも一緒に行くさ」
「ヒカルくんのことは良いのかよ」
「よく考えたら、あいつにはあいつがいる。きっとなんとかしてんだろ」
「あいつって?」
あの小さき人。イノー。
あれはただのイリュージョンで、実際はこの城のどこかにいる魔道士。
双子の兄だと言っていた。
だからヒカルをあのまま山に放置することはないだろう。
きっとヒカルは無事だ。
だが次に会う時、もしかしたらオレたちは敵同士かも知れない――――。
「行こう。王に面会だ」
城に向かって歩き出したヤブの背に、だからあいつって誰!? といつもの調子で叫ぶユウヤが追いかけた。
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SK329(プロフ) - ずみさん» コメントありがとうございますっ!やっぱり男子が良いですよねぇ、ドレス姿になるにはいつも羞恥が欲しいです笑 まだなにも浮かんでませんが、次またファンタジーやったらまたまた雷になりそうな予感があります笑 (2019年12月11日 11時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
ずみ - 完結おめでとうございます!sk329さんのファンタジーは毎回ワクワクさせるもの。雷の設定がだいすきです。やぶひかは男にしてくれてありがとう! (2019年12月10日 1時) (レス) id: 61e430b579 (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - なえさん» コメントありがとうございますっ!dkwk嬉しいですっ物語が破綻しないで良かった(*´∀`*) 続編もよろしくお願いいたしますっ (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございますっ!雷、なんかイメージに合うんですよね!火より雷。単に黄色だから?笑 双子設定も楽しく書けたのでそう言っていただけると嬉しいですっ。続編もよろしくお願いいたしますっ (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございますっ!父と子…確かに。でも気づけば勝手になんです、多分書きやすいのです笑 王国は明確にモデルいましたが、かごめと今回は単にやな奴ですね汗 そしてパレード、ラストの竜のとこ恐れ多いけれども合う…と思ってしまいました汗 (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SK329 | 作成日時:2019年10月8日 16時